パット・メセニー『From This Place』レビュー

2020年の2月21日に、ジャズギタリスト、パット・メセニーの待望の新作『From This Place』がリリースされました!

パット・メセニーのアルバムというのは2014年の『Kin (←→)』以来ということで実に6年ぶりのリリースということです。


Pat Metheny – Guitar, Keyboards
Antonio Sanchez – Drums
Linda May Han Oh – Bass and Voice
Gwilym Simcock – Piano

パット・メセニーは、数年にわたりこのメンバーでワールドツアーを行ったのですが、『From This Place』はこの編成による初のアルバムです。

このアルバム以前からメセニーとは長く共演を続けているメキシコ系のアントニオ・サンチェス、中華系ベーシストのリンダ・オー、イギリス人ピアニストのグウィリム・シムコックという、インターナショナルなメンバー構成のカルテットですね。

メセニーのこのカルテットは、もうひとつの現在進行形のプロジェクトSIDE EYEと並んで現在のレギュラーグループでですね。

まさに現代の『Secret Story』

このアルバムを聴いたリスナーはおそらく誰もが聴いて同じような感想を持つのだと思いますけど、この新作『From This Place』は、まさにかつてのパット・メセニー・グループ(PMG)を思い出させるサウンドです。

さらに言うなら、オーケストラやゲストを加えPMGのアルバム以上にPMGっぽい壮大でドラマチックな展開のサウンドを作り上げた『Secret Story』に近いサウンドかもしれません。

タイトル曲「From This Place」で聴かれる、リンダ・オーやゲストのヴォーカル(コーラス)がフィーチャーされた美しいメロディや、パットの美しいナイロン・ギターと絡むところなどが最も特徴的。
さらには、6曲目「The Past in Us」にハーモニカで参加したグレゴリー・マレットも『Secret Story』で印象的なプレイを聴かせてくれたトゥーツ・シールマンスを思いおこさせます。

『Secret Story』にアレンジャーとして参加していたキーボード・プレイヤーのギル・ゴールドスタインが、この『From This Place』にも参加しているとのことで、そういったメンバー選びもこのアルバムが『Secret Story』を思いおこされる理由ですね。

竜巻をモノトーンで写したアルバムジャケットから、なにか不吉で不穏な雰囲気をもつ重苦しいアルバムなのかと思わせるのですけど、とうぜん(シリアスな面もあるにはありますが)アルバム全編に美しい曲とアレンジが満載の、ファンの期待に応えてくれる素晴らしいアルバムだと思います。

原点回帰するパット・メセニー

PMGの活動がいったん終了したあとのメセニーの活動は、すべての楽器をほぼひとりで演奏するOrchestrinプロジェクトなどの例外を除いて、少人数の編成が多かったと思いますが、今回の『From This Place』は改めてラージ・アンサンブル的な編成によるアルバムであり、原点回帰といったところですね。

このアルバムを聴いて「ぜんぜん新しくない、PMGの焼き直し版」ということは簡単でしょう。
コアなジャズファンほど『From This Place』のようなフュージョン風/映画のサントラ風なアルバムを評価しづらいのかもしれません。
でも、わたしはこのアルバム大好きですよ。

みんな、こういうメセニーのアルバムを聴きたかったんじゃないかなー。