Sofia Rei and JC Maillard『Keter』 /「The Book Beri’ah」を全部聴くVol.1

John Zornによる第3期マサダ曲集「The Book Beri’ah」をもとにレコーディングされたアルバムは全部で11枚あり、今回はこれを1枚目から順番に聴いていき、あれこれコメントしたいと思っています。

『The Book Beri’ah, Vol. 1 – Keter』 Sofía Rei & JC Maillard

シリーズ1枚目はアルゼンチン出身のヴォーカリスト、Sofia Reiによるアルバム。
このアルバムではSofia Reiが普段から一緒に活動しているJC Maillard とのデュオ名義となっています。
この2人によるTzadik録音はこれまでに無く、Vol.1からなかなかチャレンジングなセレクションですね。

彼女は、ヴォーカル・カルテットMycaleの一員として『 Mycale: The Book Of Angels Volume 13』『 Gomory: The Book Of Angels Volume 25』にも参加していますし、『Forro Zinho』『The Song Project』ではソロ女性ヴォーカリストとしてフィーチャーされるなど、近年ヴォーカルの比重が増えてきているTzadik作品の中でも最も「目立っている」ヴォーカリストですね。

John Zornの普段の音楽からはあまりラテン要素は感じないのですが、たまにラテンテイストのアルバムを作ったりする(『Forro Zinho』とか)のはすごく不思議ですね。
かなり昔ですがMarisa Monteのアルバム『Mais』に参加したこともありましたが、あれはArt Lindsayに呼ばれただけでしょうし。

JC Maillard はフランス人のギタリスト/ピアニスト/ベースサズー奏者で、このアルバムもSofia Reiの歌とJC Maillardのベースサズーの弾き語りという雰囲気もあります(曲によってはドラムまたはパーカッションが参加)
このベースサズーという楽器はなかなか馴染みがないのですけど、若干ギターと音域が違うくらいで、ほとんどギターと同じような使われ方ですね。

マサダは哀愁のメロディとフリージャズの疾走感がミックスされるところが魅力なのですけど、このアルバムでは1曲めの「Ge’ulah」を除いてかなりスローテンポで演奏されていて異色のアルバムと言って良いかも。Sofia Reiのラテンっぽい雰囲気にひっぱられてユダヤっぽさもあいまいになっている感じです。
そのぶん多重録音でコーラスを入れるなどポップさ重視のアレンジとなっていて、ラテンフュージョンと言っても良いくらいかも。

この動画は7曲目「Tikkun」です。