ベン・アリソンの新作『Moments Inside』のテーマは”ブラジル”

今回の投稿は、ベーシスト、ベン・アリソン(Ben Allison)の新作『Moments Inside』の紹介

ベン・アリソンというベーシストは名前は聞いたことがあったのですが、今回初めてアルバム聴いてみました。
1966年生まれの今年55歳ということで、けっこうベテランなんですね。写真を見るとけっこう若々しいのですけどね。

アリソンは2000年代はじめくらいまではPalmetto Recordsというレーベルからアルバムをリリースしていて、どうもサブスク配信されていないようなので昔のアルバムはすぐに聴けませんでした。

アリソンの仕事として有名なのは、1990年代後半からアリソンが中心となって行われていた「The Herbie Nichols Project」というハービー・ニコルズの曲を演奏するプロジェクトで、当時のニコルズの再評価の機運に一役買ったようですね。
このプロジェクトによる3枚のアルバムはサブスクでも聴けます。

『Moments Inside』参加メンバーはこちら
Ben Allison (acoustic & electric bass)
Chico Pinheiro (acoustic & electric guitar)
Steve Cardenas (acoustic & electric guitar)
Allan Mednard (drums & percussion)

このアルバムにも参加しているスティーブ・カーディナス(Steve Cardenas)とは共演も長く、良くお互いのアルバムにに参加しあっていますね。
カーディナスが今年リリースした『Blue Has a Range』にも、アリソンはベーシストとして参加しています。もうカーディナスとアリソンはコンビと言っても良いくらいじゃないでしょうか。

アリソンのアルバムはというと、(カーディナスの作品もそうなのですけど)いわゆる「コンテンポラリー・ジャズ」
「コンテンポラリージャズ」という単語も人によってニュアンスが違う単語だとは思うのですね。
個人的なイメージでは「スウィング感弱め」「ブルース感も弱め」「ソロ・インプロはしっかりやる」「作曲は(比較的)重視しない」みたいな感じ。
クラシックっぽい指向のジャズが「現代ジャズ」としたら、フュージョンっぽいのが「コンテンポラリージャズ」みたいな。
で、そういう「コンテンポラリージャズ」が好きか?というと、正直あまり好きでもないのですけどね。

ただ今回の『Moments Inside』は、アリソンのこれまでのアルバムから大胆に路線変更したアルバムのようです。

シコ・ピニェイロ(Chico Pinheiro)というブラジル人ギタリストをメンバーに迎えていて、ブラジル音楽風味のインストゥルメンタルアルバムになっています。
エレクトリックギターも使っていますけど、アタック音も抑えめでひたすら楽器が心地よく鳴らされているアルバムですね。癒される。

ジャンルでいうとラテン・フュージョンになるのかな(そう呼んじゃうとダサいですけど)
このアルバムはジャズにもMPBにも無い魅力があると思うし、こういうジャンルとして「強い」気がしますね。

今年のアルバムでいうと例えばAnat Cohen & Marcello Gonçalves『RECONVEXO』などもテイストの近いアルバムだったかも。