キング・ブリットとタイショーン・ソーリーの共演『Tyshawn & King』

キング・ブリットとタイショーン・ソーリーによる共演アルバム『Tyshawn & King』
SNSでリリース情報を読んでからずっと聴くのを待っていました。

最初に簡単に共演の2人の紹介を

キング・ブリットは、フィラデルフィア出身のDJ、作曲家、プロデューサー。
デ・ラ・ソウル、マッドリブなどとコラボレーションし、‎ソランジュ、カルヴィン・ハリス、ジョセリン・ブラウン、ブランディ―などさまざまなアーティストからリミックスの依頼を受けるエレクトリック・ミュージック界のVIPですね。

タイショーン・ソーリーは、ジョン・ゾーン、ヴィジェイ・アイヤー、スティーブ・レーマン、マイラ・メルフォードなどのアーティストと共演しているドラマーであり、自身のアンサンブルをはじめ、 ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団、ジャック・カルテット、フィラデルフィア・オペラのために作品を提供しています作曲家でもあります。

今回は、年齢もジャンルもキャリアもまったく違う2人による共演アルバムになります。
この2人ってあまり接点がないように思いますが、どういうきっかけで共演したんでしょうね?
2人の共通項といえば、現代音楽アンサンブルAlarm Will Soundと共演しているということくらいかな。

このアルバムは2日間スタジオに入ってレコーディングされていて、スタジオセッション的に作られた作品のようです。
基本はすべての曲をワンテイク録音。いくつかの曲でオーバーダブを実施したそうです。

キング・ブリットはどちらかというとダンス・ミュージックっぽい人だと思うのですけど、このアルバムはアンビエントハウスっぽいかも。ムーグなどのアナログシンセを多用したトラックもダークでドープ。めちゃカッコ良いです。

ソーリーは、キング・ブリットが作るビートに、ドラムセットを使ってパーカッシブな変化を付けていっています。

普段のジャズ系のインプロのようなテクニカルな小技は封印して、割とシンプルでグルーヴ感あるドラムを叩いていたのはちょっと意外でした。

アルバムの4曲目5曲目は一転してエレクトロニカっぽい展開になっていて、こちらも良い雰囲気です。

Live at Other Minds Festival

このアルバムのリリースに先駆けて、2021年10月15日に(おそらくアルバムリリースも意識して)この2人のライブがOther Minds Festivalで行われス、トリーミング配信されていました。(観ましたよ!有料10$)

『Tyshawn & King』のアルバムジャケットはドラムとアナログシンセのイラストが描かれていて、これはレコーディング時のスタジオの様子なのだと思いますが、このライブでもほぼレコーディングと同じセッティングで行われたようですね。

こういうライブエレクトロニクス的な音楽は映像で観ると音の切り替えタイミングが良くわかって音源で聴くのとは違った楽しみ方がありますね。

ほぼ電子音ビートとドラムだけ、ただそれだけでここまで多彩な音で飽きさせずに聴かせるって、なかなかすごいことだと思いますよ。

ちなみにOther Minds Festivalというのは、Other Mindsというカリフォルニアを拠点に活動する音楽家を支援するNPO団体があり、そこが毎年主催しているフェスのようです。
どちらかというとクラシック・現代音楽寄りの団体のようですが、今年のフェスははジャズ系のアーティストを多数呼んだようで今回初めて存在を知りました。

キング・ブリットとタイショーン・ソーリーと同日のプログラムでは、ベン・ゴールドバーグ(クラリネット)、リバティ・エルマン(ギター)、ジェラルド・クリーヴァー(ドラム)によるトリオ演奏もあり、ストリーミング購入するとこちらもいっしょに聴けてなんかお得でした。(特にリバティ・エルマンは動画少ないので貴重。