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「声」のアート ~ 仁科 彩 / 足立智美 ~

今日は、「ヴォーカルのみで作られる音楽」というくくりでこれまで聴いた中でお気にいりのアルバムを取り上げようかなと思っています。

「声は最高の楽器」というフレーズがあるように、ヴォーカルは他の楽器に比べても格段に豊かな表現力を持っています。

どんなにがんばってピアノを演奏してもピアノ曲にしかならないのですが、ヴォーカルで表現される音楽はジャンルやスタイルも本当にバラエティ豊かです。まぁ、歌のないジャンルというのもほぼ存在しないですしね。

「ヴォーカルのみ」というくくりですが、いくつか系統に分けて選んでみました。
今回の投稿は現代音楽、主にジョン・ゾーンのレーベルTzadik関係です。

いわゆるポップ・ミュージックの歌はたいていは歌詞があり、例えばラブソングのようにその歌詞に意味とストーリーを持ち、リスナーは歌を聴くと歌詞で描かれるシーンを映像としてイメージする訳です。

ただ、この歌詞の存在が制約になり、ヴォーカルの自由な表現を妨げているとも言えます。
単語が単語として聴き分けられるような発声やフレージングが必要になってきますから。

そういった制約を排除し、声を楽器として考えて表現を拡大する試みは古くから行われていたようです。それはメレディス・モンクに代表されるように現代音楽というか現代アートのフィールドで盛んだったよう。
現代音楽はTzadikレーベルの主戦場でもあるので、ヴォーカル・アートを扱った作品も多いですね。

現代音楽

Nishina Aya 『Flora』

傑作中の傑作。

参加メンバーは
Becca Stevens (tracks: 1, 2, 4, 6)/
Gretchen Parlato (tracks: 4, 6)
Jen Shyu (tracks: 3)
Monika Heidemann (tracks: 4, 6)
Nina Riley (tracks: 2)
Sara Serpa (tracks: 5, 6)

それぞれが自身名義のアルバムをリリースするシンガーばかりで、かなり豪華メンバーなんじゃないでしょうか。特にBecca StevensやGretchen Parlatoなどは、ふだんはTzadikと関連のなさそうなシンガーも参加していて、レーベル側もかなり力を入れて作ったのかも。

Tzadikの代表的なヴォーカルグループというとMycaleかな。Mycaleなどはどちらかというと現代音楽よりで、例えるならストリング・カルテット的にも聴こえるのですが、
この『Flora』はむしろサウンドスケープやアンビエント音楽のようですね。

声の揺らぎなどを感じさせる曲も秀逸ですが、ロングトーンのフレーズを完璧にコントロールして歌い切る各メンバーの力量は素晴らしいの一言だと思います。

仙台出身で2000年ごろからNYに移住して現代音楽家として活動されていた仁科彩(本名はあやかさんらしい)が2013年にリリースしたアルバム。動画は高村智恵子にインスパイアされた曲だし、他にも東日本の震災をモチーフにした曲などもあり。

出典:https://www.ayanishina.org/

当時アルバムのリリースも無く、一般的には無名だっただろうと思いますが、そんな新進の作曲家のアルバムをレコーディングしてリリースできるところがTzadikレーベルの大きな存在意義なんだなと思います。
このアルバムのレビューもたまに見かけますが、ほぼみんな興奮気味に絶賛していて、それほどインパクトのあるアルバムだったんだなと。

彼女は2016年に帰国して、山梨学院大学として教鞭を取ってるそうですが、HPを見ると新しい音源などもアップされていました。またアルバム出してくれないかなぁ。

Fragment (Reference) from ayanishina.org on Vimeo.

足立智美ロイヤル合唱団『ぬ』(2001)

現代音楽家の足立智美さんが結成した「ハモらない合唱団」である足立智美ロイヤル合唱団

このグループもTzadikからアルバム「Yo」をリリースしているのですが、こちらのアルバムがオススメ。
Tzadik盤と収録曲がダブっているけど(おそらく権利関係の問題から)何曲か別の曲に差し替えられています。

このグループは、いわゆるポピュラー音楽の歌詞と違ってあくまで言葉の響きと意味がまず先にあり、その言葉の並びを音楽的に昇華させようとしているかのようです。

たとえば「かんのみほ」という曲は、女優の菅野美穂さんの名前なのですが、別に彼女のことを歌っているわけではなく、「かん」「の」「み」「ほ」という単語を多層的に組み合わせて音を紡いでいくという曲。
最初は大笑いしながら聴いていたのですが、繰り返し聴くと計算された音の連なりに引き込まれます。

ここでレコーディングされた作品が「音楽」と「詩」のどちらなのかかというと、作成プロセスはむしろ「詩」に近いかも
美術家の中ザワヒデキさんなど、メンバーが純粋な声楽家でないことからもこのグループのコンセプトがうかがえます。

同じようなコンセプトのグループというと、ドラマー吉田達也さんのプロジェクトトZubi Zuvaの『Jehovah』などが近いのかな。

ただ足立智美ロイヤル合唱団の曲はサブスクにもどこにも無いのです。もうCDを買ってください。
足立智美さんのオフィシャルYouTubeチャンネルにロイヤル合唱団の曲を演奏している動画もありますが、これは学生?へのワークショップのような演奏で、テンポも何かゆっくりで「ちょっと違うな」という感じです。

 

それでは次回は「声のアート 〜ワールドミュージック編〜」です

Avant-gerde
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