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Tetsu Inoue / アンビエントの”ゴースト”

Tetsu Inoue / アンビエント・ゴッド

Tetsu Inoue(井上徹)さんは、1990年代〜2000年代に活躍したアンビエント・ミュージックのパイオニア的存在。
彼のファーストアルバム『Ambiant Otaku』(1994)は黎明期のアンビエント音楽のマスターピース人気アルバムの1枚で、のちのちまで語り継がれてるマスターピースですね。

わたしが彼の存在を知ったのはジョン・ゾーンのTzadikレーベル経由で、彼は『 Psycho-Acoustic』(1998)『Fragment Dots』(2000)と、 2枚のアルバムをリリースしていました。

アンビエント黎明期の活動

初期のブライアン・イーノのアンビエント作品やThe KLF『チルアウト』などは、まさしく言葉通りの実際の音をサンプリングした環境音が特徴的だったのですが、時代が進むにつれシンセなどの電子楽器や特徴的なドローン音などを使ったスペイシーな音が主流でした。
『Ambiant Otaku』もちょうどこの時期に作られた作品で、シンセ音などの人工的な音をベースに作られたアルバムですね。

その後、世の中の電子音楽がMax/MSPやKYMAなどのソフトベースの音響処理にシフトするのに合わせて、テツ・イノウエさんも徐々にミニマルでグリッチーなスタイルにウェイトを移しつつ、一貫してアンビエント音源をリリースし続けていました。

アンビエント・ゴースト

他の電子音楽ミュージシャンとのコラボプロジェクトも含て、比較的コンスタントにアルバムをリリースしていたのですが、2012年くらいを境に新作の情報もなく、ほぼ音信不通になります。
HPの更新もなくなり、過去に彼のアルバムをリリースしたFAXレーベルの担当者などもコンタクトが取れない事態に陥ったようです。

ネット上でも「スペインに移住した」「亡くなってしまった」「震災があって日本に帰った」など真偽不明な情報が拡散されていたようです。
実際、これらの噂はほぼソースの無い想像の話だったみたいですけど。

けっきょくのところ今になっても彼がいま何をしているのかは誰も確かな情報は持っていないようです。

自ら選んで、世間の目を避けて隠遁生活をしているのかもしれませんが、はっきりしていることは「もう彼の新作がこの先にリリースされることは無さそうだ」ということですね。

それでは彼のこれまでの作品の中でお気に入りを紹介します。

ソロ時代

ここで彼のソロアルバムの中で、わたしのお気に入りを2枚紹介

Yolo (2005)

この時期になると『Ambiant Otaku』の頃の人工的な音の肌触りはなくなり、おそらく自分のイメージする音をほぼ理想的な形で鳴らせるようになったのだと思います。
音のレイヤー感が薄くシンプルになり、ミニマル志向になってきて、最もテツ・イノウエさん”らしい”作品と言えるかも。

Fragment Dots(2000)

名作中の名作。永遠のマスターピース。

基本的にはアンビエントな音作りを続けてきたテツ・イノウエさんですが、グリッチ/エレクトロニカ路線に完全に針を振り切ったアルバム。

細部まで作りこまれた音のひとつひとつの粒が有機的にからみあい、初めて聴いたときは衝撃でした。

#私を構成する9枚に入れたかったのですけど、泣く泣く落とした数枚のアルバムのうちの1枚です。

コラボレーション作品

テツ・イノウエさんは、電子音楽のミュージシャンとしては他のミュージシャンとの共作が多いのだと思いますが、その中で好きなアルバムです。

Tetsu Inoue & Taylor Deupree『Active/ Freeze』(2000)

テツ・イノウエさんは、エレクトロニカ女子の憧れ、Taylor Deupreeともコラボアルバムもリリースしています。
このアルバムはTaylor Deupreeのレーベル12Kからのリリースでもあり、おそらくDeupreeからのオファーで実現したんじゃないでしょうか。
消え入りそうなくらいの微分音をミニマルに重ねるスタイルで、穏やかな中に潜むアヴァンギャルドさがなかなか聴くのに体力が必要なアルバムかも。

Tetsu Inoue & Carl Stone『pict.soul』(2001)


コンピューターミュージックの人気アーティスト、サンプリングゴッドことCarl Stoneとの共作。

Max/MSPの音響処理で作られたヴァラエティ豊かな音が魅力のアルバムですね。まるでMax/MSPというソフト可能性に挑戦したショウケースのようにも聴こえます。
これまでのテツ・イノウエさんのアルバムとは違い、ホワイトノイズなどを多用したちょっとダーティーな音づくりも聴きどころですね。
ヘッドホンで聴くと左右に音像が分かれていますが、これは2人の音作った音をそれぞれでパンで左右に振り分けてるのかも。

それにしてもこの作品のATOYの採点、60点はありえんわー!