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スーザン・アルコーン 『Pedernal』レビュー

アメリカ感謝祭からクリスマスの流れで年末ムードになるのか、11月末にもなると新譜アルバムなどはあまりリリースされないですね。
なので音楽雑誌は12月初頭にはその年のベストアルバムを発表したりしています。

そんな中11月末というタイミングでリリースされたペダル・スティール・ギター奏者、スーザン・アルコーン(Susan Alcorn)の新作を紹介

ニューヨークタイムズが選ぶ2020年ベスト・ジャズ・アルバムにはリリースしていきなり8位に選ばれていました。
ちなみに一位はイマニュエル・ウィルキンス(Immanuel Wilkins)の『Omega』

テキサス、ボルチモア、そしてニューヨーク

スーザン・アルコーンの新譜『Pedernal』はストリーミングでは聴けません。Bandcampのみ

Personnel

Susan Alcorn – pedal steel guitar
Mark Feldman – violin
Michael Formanek – double bass
Mary Halvorson – guitar
Ryan Sawyer – drums

スーザン・アルコーン(1953年生まれ)は、アメリカの作曲家、即興演奏家、ペダル・スティール・ギタリスト。70歳を目前に控えたベテランミュージシャンです。

21歳からべダル・スティール・ギターを演奏し、長らくテキサスをベースに音楽活動を行なっています。楽器と土地柄からも分かるように、地元テキサスのカントリーバンドやウェスタン・スイング・バンドで演奏していたそうです。
そこから80年代になり、カントリー・ウェスタンのペダル・スティールのテクニックから、徐々に独自のテクニックを拡張するようになり、フリージャズ、前衛的なクラシック音楽、インドのラーガ、世界の様々な民族音楽に影響を受けた独特なスタイルを形成するようになります。

こういった音楽スタンスは、ポーリン・オリヴェロスの提唱する「ディープ・リスニング」哲学の影響を強く受けたそうです。
(ディープ・リスニングとは、静かな場所で明かりを落として聴覚だけに感覚を集中し、自己の内面のイメージを広げていく、という一種の瞑想体験プログラムみたいですね。ニューエイジ的な感じかも)

実際のところ、彼女の作品はかなり内省的でアンビエント音楽とも言えるような音楽が多くて、大抵はソロ、もしくはデュオといった少人数での演奏が多かったみたいですね。

フリージャズ的な要素を取り入れた演奏をしていたとはいえ、ジャズミュージシャンとの共演じたいは少なかったアルコーンなのですが、2010年代後半くらいから積極的にジャズミュージシャンのアルバムに参加するようになります。

そのきっかけとなったのは、間違いなくメアリー・ハルヴォーソン・オクテットの『Away with You』ですね。

このアルバムでもアルコーンのサステインの効いた音色が、ラージアンサンブルの中で曲のカラーを変える秘密兵器として非常に効果的に使われていました。
こういうべダル・スティール・ギターの響きのアタック音の無さは、なんとなくビル・フリゼールのギターを思い起こさせるところもありますね。

アルコーンはその後、(おそらくハルヴォーソンつながりだと思いますが)Nate Wooleyの『Columbia Icefield』『Seven Storey Mountain VI』に参加するなど、徐々に即興ジャズの世界で活躍の幅を拡げています。

そして今回の『Pedernal』は、近年のジャズ系の仕事を記録した待望のソロアルバムという感じです。

マーク・フェルドマンら強力メンバーの参加

『Pedernal』の参加メンバーはかなり強力。
ギターのハルヴォーソンとベースのフォーマネクという、Thumbscrewのふたりが中心になって構成されている感じです。
(フォーマネクは『Mirage』(2013)というアルバムでアルコーンと共演していますし)
またこのアルコーン・カルテットは、ライブではトマ・フジワラがドラマーとして参加することもあるようで、Thumbscrewの3人がそのままバックを務めるという編成もあるみたいです。

このソロアルバムではRyan Sawyer というドラマーが担当していますね。
彼は元At The Drive-Inのドラマーで、サーストン・ムーアなどとも共演してきたポスト・ハードコアなドラマーのようです。このアルバムでは割とジャズっぽい演奏に徹していますけど。SawyerもアルコーンとともにNate Wooleyのアルバムに参加しています。

そして最後はヴァイオリンのマーク・フェルドマン。
フェルドマンはもう70歳近いし、最近あまり動向を聞かなかったほぼ引退状態かと思っていたのですけど、ここで名前を見つけた時はけっこう胸が熱くなりましたね。
マサダ・ストリング・トリオをはじめとした名盤の数々をこれまでずっと聴いてきて、思い入れの強いミュージシャンなので。

実際のところ、どうしてマーク・フェルドマンが参加したんでしょうね?
フェルドマンはクラシック畑の人というイメージですけど、実は1980年から1986年までの期間にテネシー州ナッシュビルでカントリー・ウェスタンのスタジオミュージシャン活躍していた時期があったそうです。これかなり意外でした。
ロレッタ・リンやレイ・プライスといった歌手のツアーグループのメンバーでもあり、200枚以上のレコーディングに参加したそう。

実はフェルドマンとアルコーンは年代も近く、若いころにカントリー・ウェスタンの世界で活躍したという共通点があるのですね。
フェルドマンはその後ニューヨークに出て即興ジャズの世界に飛び込み、アルコーンは地元に残り独自の音楽を続けていたという違いはありますけど。

フェルドマンとアルコーンは、はるか昔にカントリー・ウェスタンの世界で面識があって、今回のアルバムで数十年ぶり再会!みたいなことがあるのかも、という想像を膨らませてしまいますね。

Jazz
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