チャーリー・ハンターの帰還 再び

ギタリストのチャーリー・ハンターといえば、2021年にリリースしたサム・フライブッシュ(Sam Fribush)とのオルガン・トリオが素晴らしいアルバムで、このブログでも取り上げました

その後の彼の活動を眺めてみると、なかなかに素晴らしいアルバムを連発しています。

ハンターというと90年代のブルーノート期のイメージが強いと思うのですけど、いま現在はもう(何回目かの)黄金期を迎えていると言って良いんじゃないですかね。

『SuperBlue』

ハンターの近年の活動でいうとまずはなんといっても、2021年にリリースされたカート・エリング(Kurt Elling)のアルバム『SuperBlue』

カート・エリングは、低く深みのある声で歌い上げるフランク・シナトラなどの系譜に連なるヴォーカリストで、グラミー賞常連でもあり名実ともに現代最高の男性ジャズヴォーカリストのひとりと言えます。

エリングは、オーケストラやビックバンドなどゴージャスでかっちりとプロデュースされた演奏をバックに歌うイメージですが、この『SuperBlue』は、異色のメンバーを加えての作品となっていました。
そのメンバーはというと、ギタリストにチャーリー・ハンターに加え、ヒップホップとジャズのミクスチャーユニットであるButcher Brown(ブッチャー・ブラウン)からキーボードのDJハリソン、ドラムのコーリー・フォンヴィルが参加しています。

※実はハンターのデビューは「The Disposable Heroes Of Hiphoprisy」というヒップホップ・グループだったのですよね。セッション参加というよりは、ハンターのギターとドラムとMCでがっつりツアーに廻っていたそう。ハンター本人はあまり自分のことをジャズミュージシャンとは思っていなさそうです。

エリングはというと、いつもはバシッとスーツを着こなしてるのに「オレ、こういうのも歌えちゃうんだよね」という感じでラフな雰囲気で歌っていて、若干あざとい気はするのですけど、でも悔しいですけどカッコ良いのですよね。

ハンターはここでも(かつての8弦、7弦ではなく)普通の6弦ギターを演奏し、またプロデュースも行っています。
かなり異色の組み合わせですが、おそらくは全体のディレクションをハンターが行うことでまるで長年いっしょに演奏してきたグループのようにまとまった演奏になっています。

このスローで地を這うようなグルーヴはクセになりますねえ。

この『SuperBlue』は好評だったようで、ライブ盤もリリースされていますね。

『Just Play the Blues』

もう1枚、近年のハンターの参加アルバムとして特筆したいのは、オルガン奏者のウィル・ブラデス(Wil Blades)とのオルガン・トリオでのアルバム『Just Play the Blues』

Charlie Hunter(g)
Wil Blades(org)
George Sluppick(ds)

というメンバーで、タイトル通りブルースナンバーを取り上げています。

ノースカロライナ州グリーンズボロという、ハンターが住む街で行ったライブ録音ということですが、ブラデスは普段は西海岸で活動していますので、ハンターがブラデスを呼び寄せたということですね。
サム・フライブッシュとのオルガントリオの時もそうでしたが、ハンターはコロナ禍においては遠出しないという信念でもあるのですかね?

ブラデスはというと、おそらく彼のことを知っている人は日本にはほとんどいないと思うのですが、たまたまこのブログの初の投稿が初めてだったんです。

フォントの設定や段落の分け方など、初めてのことでブログサイトの作り方に慣れていなかったこともあって、あれこれやっている間、ずっと彼について書かれた文章を読み直し彼の音楽を聴いていました。
そういったこともあってブラデスの事はすごく印象に残っているのですよね。
なので彼のことは少しひいき目にみてしまいます。

ブラデスはドラマーのスコット・アメンドラとの双頭バンド「アメンドラ Vs ブラデス」などでも知られているオルガン奏者です。
ジョーイ・デフランセスコのような華麗な鍵盤さばきを聴かせるわけじゃないですが、ツボを押さえたプレイできっちりカッコ良いです。

「アメンドラ Vs ブラデス」はというと、ギタリストのジェフ・パーカーが珍しくファンク・ジャズをプレイしていますね。

ジェフ・パーカーってオルガンジャズもイケるの??とちょっと懐疑的で、聴いてみたら案の定イマイチでしたが、、
やっぱりスタイル的に向き不向きってあるんだなーと思います。

ブラデスはウィル・バーナードやスコット・アメンドラなど、チャーリー・ハンターの「盟友」とも言えるミュージシャンと共演してきたので、今回ハンターと共演したというのもごく自然の流れなのでしょう。

もうひとりの共演者であるドラマーのGeorge Sluppickは、ブルースのライブシーンで活躍するセッションミュージシャンだそうです。

このアルバムはブラデスが参加したアルバムの中でも出色の出来だと思いますが、やっぱりこれもハンターのプロデュース力ということですかね。

「グルーヴ・マシーン」になりがちなオルガン・トリオをほどほどのところでブレーキをかけている感じです。
シャーデーの「Please Send Me Someone To Love」みたいなちょっと変わった選曲も面白いですね。

今回はライブアルバムでブルース・オンリーということでしたけど、こうなるともう、ハンター、ブラデス、アメンドラのオルガントリオでゴリゴリのジャズファンクアルバムを聴いてみたいものです。