GANAVYA 『Aikyam: Onnu』レビュー

今日のブログは、ピアニストのヴィジェイ・アイヤーの進行形のプロジェクトとして、最近ライブなどをよく行っているRitual Ensembleというグループについて。

このグループはピアノのヴィジェイ・アイヤーに加え、サックス奏者のYosvany Terry、南インドのパーカッションであるムリダンガムを担当するRajna Swaminathan、そしてヴォーカル担当のGanavya(Ganavya Doraiswamy)という4人。
アイヤーを中心に、ハーバード大学に籍を置くメンバーによって結成されたグループのようです。

ハイチ出身のYosvany Terry以外の3人がは南インドルーツのミュージシャンという所も特徴的。
アイヤー自体は若い時にインド音楽を本格的にトレーニングした訳ではないようなのですけどね。

まだこのグループではレコーディングはしていないようですが、最近になってこの4人による動画が公開されていました。

このRitual Ensembleに関してはこの動画以外あまり聴けていないのですけど、この動画を聴く限りはこのグループはまだまだ発展途上なのかなと思います。

ムリダンガムのSwaminathanはもっと派手に叩いて欲しいなと物足りなく思うし、たまにYosvany Terryがアフロ・カリビアンなパーカッションを入れてくるのもなんとなく場違いな気はします。

そんな中、このメンバーによる演奏の中ではGanavyaが歌う場面がいちばんしっくりくる感じはします。
全体的にストイックな演奏の中でクールで存在感のあるヴォーカルで良かったと思います。南インドベースのメリスマティックな声が素晴らしいのですけど、単純なクリシェにならずにうまくインプロに消化させているようです。
インド声楽テイストを前面に出す感じじゃなくさりげなく混ぜてくる感じがイイですね。

Ganavya『Aikyam: Onnu』

Ganavya (vocal)
Albert Sanz (piano)
Bandolero (per)
Borja Barrueta (drums, per)
Michael Olivera Garcia (drums, per)
Pablo Martín Caminero (bass)
Perico Sambeat (sax)

Ganavyaですけど、彼女は2018年に1stソロアルバム『Aikyam: Onnu』をリリースしています。

彼女はこれまでの活動としては、2012年にリリースした、ピアニストであるアルフレッド・ロドリゲスのアルバム『Tocororo』でのゲスト出演が最も有名なのかも。
クインシー・ジョーンズによるプロデュースや、レバノンの微分音トランペッター、イブラヒム・マーロフやリチャード・ボナなどの豪華ゲストで当時話題になったアルバムのようです。

『Aikyam: Onnu』でもラテン系のメンバーが多数参加しており、この『Tocororo』の時の人脈からサポートメンバーを選んでいるんじゃないかと思いますね。

バックの演奏はかなり控えめで、ピアノとパーカッションとGanavyaの歌という組み合わせがメイン。

彼女はジャズスタンダードなども歌うのですが、このアルバムではさりげないながらも南インドの古典声楽テイストの歌い方がとても良いですね。
インド音楽は後半にいくにつれてテンポアップして盛り上げるのがお約束なのですが、このアルバムではシリアスで抑制の効いた彼女の繊細なヴォーカルが聴けます。

We Have Voice

ちなみに彼女はムリダンガムのRajna Swaminathanとともに、というジェンダーや人種、国籍などによる不平等に対する活動を行っている「We Have Voice Collective」のメンバーのようです。

2019年にリリースされたジャズアルバムを並べてみても、女性ミュージシャンのアルバムがすごく目につくようになったと思います。
それも、このWe Have Voice Collectiveに代表されるミュージシャンたちの活動があってのことなのだと思います。
グラミー賞のスピーチでとってつけたようなmetooスピーチをするポップスターなんかではなくて、こういう草の根に根差した活動はもっと評価されて良いと思うのですけどね。