スティーブ・ライヒ × ゲルハルト・リヒター

ライヒ/ リヒター『Reich/Richter』

今回は、スティーブ・ライヒが今年2022年にリリースしたアルバム『Reich/Richter』を聴いてみました。

このアルバムは、もともとは2019年にマンハッタンのアートセンター「The Shed」のオープンを記念したプロジェクト「Reich Richter Pärt」のために作られた曲を収録しています。

現代アートの巨匠であるゲルハルト・リヒターと、映像監督のコリアーナ・ベルツが共同で制作した映像『Moving Picture』と、ライヒがこの映像むけに新たに書いた曲を同時に流すという試み。

※このプロジェクトは、アルヴォ・ペルト(Arvo Pärt)とリヒター、スティーブ・ライヒとリヒター、それぞれによるコラボレーションの2部構成となっていたようです。

ゲルハルト・リヒターというと、ちょうどいま東京国立近代美術館でゲルハルト・リヒター展が行われているので、このアルバムのリリースはタイムリーなんじゃないでしょうか。

ライヒは今回のような音楽と映像のマッチングをこれまでも行っており、妻でビデオ・アーティストのベリル・コロットと作り上げたビデオ・オペラ『ザ・ケイヴ』と『スリー・テイルズ』は、1990年代の彼の最も重要な作品でした。

この『Reich/Richter』ですが、こちらの「The Shed」のオープン時の動画が、画像と音楽の雰囲気がわかりやすいですね。
ライヒとリヒターによるコラボパートは動画の後半部分です。

この映像作品はフルで約37分あり、映像にライヒがつけた音楽も同じ37分の長さ。このアルバムにはその全てが収録されています。

また今回のアルバムは、「The Shed」のオープン時に使用された音楽とは別に、アルバム用に室内楽の最高峰「アンサンブル・アンテルコンタンポラン」により新たに再演・録音したものになります。

いやー、スティーブ・ライヒ、良いですねー。

伸びやかな木管楽器の響き、そしてシンプルな音列が徐々に折り重なり、グラデーションのように刻々と変化していく幻想的な音色。

一般的なライヒの音楽のイメージはというと「現代音楽としては深み足りない」なのかもしれないですが、このアルバムから聴ける爽快感というか晴れやかな雰囲気は2022年においてもいまだに貴重なものだと思います。

聴いているともう心洗われますね。ちっとも難解な音楽じゃないです。

このアルバムは、ライヒのこれまでのどのアルバムよりも「ライヒらしい」と言えるかもしれません。

なので「ライヒっぽい」以外に説明がいらないのかもしれませんが、強引に自分の中の印象の似たアルバムをあげると、ハンス・ジマー作曲の『インターステラー』のサントラに近いかも。

追記

今回のアルバムとは全く関係ない話で、ジュリアス・イーストマン (Julius Eastman)という作曲家がいるのですが、さすがに今の時代、彼のことを「黒いスティーブ・ライヒ」と呼ぶのは止めた方が良いんじゃないですかねえ。