ノルウェー生まれのヴァイオリン奏者マリ・サムエルセン(Mari Samuelsen)がドイツ・グラモフォンからリリースした新作アルバム『LYS』について
いや、もうこれは紛うことなきクラシック音楽。
わたしはクラシック音楽は全くうとくて、クラシックと言えるアルバムをこのサイトで取り上げたのは初めてかも。
このサイトは投稿をジャンルごとにカテゴリ分けしているのですが、クラシック音楽が入るカテゴリはなくて今回「Other Genres」というのを新たに加えたくらいです。
そんな自分がこのアルバムを聴いてみたきっかけは、前回のブログでハンナ・ピール(Hannah Peel)のアルバムを取り上げたためです(こちら)
この『LYS』は13人の女性作曲家の曲を取り上げて演奏するという試みで、その13人のうちのひとりとしてハンナ・ピールの曲も取り上げられていました。
そのため、この『LYS』がapple musicで関連作品としてサジェストされてきたという訳です。
また、ハンナ・ピール以外の作曲家リストにはキャロライン・ショウといった気になる名前もあり、変わったところではビヨンセの『Halo』を演奏したり。
またこの作品は、基本はサムエルセンのヴァイオリンとオーケストラの共演なのですが、作曲者自身がピアノ、パーカッション、プログラミングなどで参加しているというのも面白いですね。
(例えばハンナ・ピールはエレクトリック・パーカッションで参加してました。ビヨンセは当然不参加です)
ミニマル × クラシック
マリ・サムエルセンという名前は今回初めて知ったのですが、最近のポスト・クラシカル関係のプロジェクトでよく名前が出てくるヴァイオリニストのようです。
正統的なクラシック教育を受けてきた人で、バッハなどもレバートリーだそうなのですが、同時にフィリップ・グラスやマックス・リヒターなどのミニマルミュージックとしてカテゴライズされる作曲家の曲を好んで取り上げているようです。
映画音楽のジェームズ・ホーナーが書いたクラシック作品『パ・ド・ドゥ』にソリストとして参加したり。
ちょうどコロナ禍の直前にマックス・リヒターとともに来日もしているみたいです。
彼女について書かれたweb記事ではこちらがいちばん詳しかったかも
まあこの記事を読んでも、クラシックの世界で彼女がどういう立ち位置の人なのか、「ドイツ・グラモフォンと専属契約」というのがヴァイオリニストとしてどれほど希少なのかは、じぶんには正直よくわからないですけどね。
ただ、なんとなく権威主義的なクラシックの世界からは少し外れた演奏家なのかもしれません。
演奏はというと、基本的にポスト・クラシック(=ネオ・クラシック)のマナーに沿った演奏で、美しい曲、美しい演奏が並んでいます。
非常にエモーショナルでドラマチックなのですが、ウェットになりすぎる一歩手前で踏みとどまっていて、そのバランス感覚が聴いていて心地よいですね。
普段こういうタイプの音楽をあまり聴いていないせいか、美しい曲と演奏が体にしみわたり、幸福感に満たされていく感覚を味わうことができましたね。
収録曲
1.Meredi:White Flowers Take Their Bath
2.ドブリンカ・タバコヴァ:夜想曲(ヴァイオリンとピアノ編)
3.Hannah Peel:Signals
4.キャロライン・ショウ:《Plan & Elevation》より第4曲:The Orangery、第5曲:The Beech Tree
5.Laura Masotto:Sol Levante
6.マーガレット・ハーマント:Lightwell
7.ヒルデガルト・フォン・ビンゲン:O vis eternitatis(Tormod Tvete Vik編)
8.ビヨンセ:ヘイロー
9.ヒドゥル・グドナドッティル:Beer(マックス・クノート編)
10.レーラ・アウエルバッハ:ヴァイオリンとピアノのための24の前奏曲 作品46より第15番:Adagio sognando
11.Hannah Peel:Reverie(ソロ・ヴァイオリン、弦楽とエレクトロニクス編)
12.ハニャ・ラニ:La Luce
13.クラリス・ジェンセン:Love Abounds In Everything
14.アンナ・メレディス:Midi(ソロ・ヴァイオリンとエレクトロニクス編)
追記
ビヨンセの曲を取り上げているんですが、こういう「わたし、こういう音楽にも理解があるんですよね」みたいなのはどうなんでしょうね。
ジャズミュージシャンがレディオヘッドのカヴァーするみたいなもの?
少なくともこのアルバムではビヨンセの曲は浮いていたし、良いアレンジでも無かったような。