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名実ともにその価値を失ったグラミー賞

1/27に開催された第62回グラミー賞の授賞式ですが、当日の朝にNBAのロサンゼルス・レイカーズで活躍したコービ・ブライアントの突然のヘリコプター事故での不慮の死が伝えられ、悲しみに包まれた授賞式となりました。

授賞式の会場となったステイプルズ・センターは、NBAバスケットのLAレイカーズのホームコートであり、亡くなったコービがまさに世界中のNBAファンを熱狂させた、まさにその場所だったのですし。

そんな第62回グラミー賞ですが、直前に起こったデボラ・デューガン前アカデミーCEOによる、アカデミー内部の不正・腐敗の暴露が話題となっていました。

ざっくり言うと「グラミーのノミネートはアカデミーの会員によって好きなように操作されている」という告発です。

詳細について詳しい記事はこちら

この件は以前にもブログに書きましたが、その時の投稿はこちら

以前から言われていたグラミー批判

グラミー賞への批判はここ最近はずっと言われており、ヒップホップへの冷遇(ケンドリック・ラマー『DAMN』)、相対的に女性の低い評価(ビヨンセ『Lemonade』)、そういった世間とのズレから「時代遅れ」という批判を受けてきました。
そのために、投票の公平性に関しても以前から疑問が投げかけられてきました。

そんな中でのこの暴露騒動は、「ああ、やっぱりか」と言う印象をリスナーに与えましたし、グラミーの価値を完全に打ち砕いたような状況です。

デューガンさんが主張するノミネートの不正に関してはアカデミー委員会側はとうぜん否定しています。

ですが、デューガンさんは弁護士を立てて公正取引委員会という公的な機関に訴えており(多少盛ってるところはあるかもしれないけど)真実に近い内容を告発しているはずです。
告発を受けたアカデミー協会が否定できないレベルの内容を暴露しているともいえます。

■追記
今回の騒動を受け、ビヨンセとテイラー・スウィフトは授賞式への出席をキャンセルしたようです。
「主要な部門にノミネートされていないからできたこと」という見方もできますが、ともあれ今回の件への抗議の意味も込めての欠席でしょう。

アーティスト受賞コメントにも注目

まさにいま論争になっている話題ですが、とりあえずアカデミー協会はこの件に関して全力でかん口令を出すのだと思います。
会場入りするメディア関係者にもこの件を訊かないように手をまわしていると思いますし、アーティスト側も(カットされるとわかっているので)コメントしないでしょう。

もしアーティストがコメントするなら、例えば受賞スピーチのようなカットできないシチュエーションでゲリラ的に発言するしかないですね。
だからこそ今年の授賞式はステージ上で誰が何を発言するかすごく注目。

例えばハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ騒動の時はそうでしたが、世間の非難を浴びている人を追随するように非難するのは言ってみればノー・リスクですよね。

今回の件は、場合によっては自分の身内ともいえるレコード会社やレーベルの人間がノミネート不正に関わっているかもしれないという点が大きな違いです。

自身の関係者にまで批判や不利益が及ぶかもしれない状況で、それでも正義・公正を貫いてアカデミー委員会を批判できるのか?という話です。
今年のノミニー(特に女性)は、いわば踏み絵を踏まされる形となって気の毒な気もします、やはり明確なメッセージを出してほしいですね。

アカデミー委員会だけじゃなく、ミュージシャンまでがアカデミーの旧態依然とした体制にからめとられていたとしたら、ホント悲しすぎます。

追記 グラミーが終わって

今年のグラミーは主要部門をビリー・アイリッシュが受賞。
受賞スピーチで今回の不正疑惑についてのビリーのコメントは無し。

アルバム賞のスピーチでビリーは「わたしはアリアナが受賞すべきだと思う」と今回の不正疑惑に触れているのか触れていないのか微妙な、モヤっとしたコメントを出していましたね。

お兄さんのフィニアスに至っては、いちばん最初にアカデミー委員会に感謝を述べてさえいました。。。

2人そろってこの不正疑惑についてはスルーした形です。
まあそうなりますよね。みんな自分の立場が大事。

そんな中で司会のアリシア・キーズはスピーチで今回の疑惑について言及していたようです。

「私たちはネガティブ・エナギーは拒否します」

「古いシステムも拒否します」

「リゾ、アリアナ・グランデ、ビリー・アイリッシュ、私たち(女性アーティスト)を止めることはできません」

「私たちはなりたい自分になれる。誰とも違う存在になれる。オンリーワンの存在になれる。それも今すぐに」
と言った発言をしたそうです。

他のミュージシャンがほぼ口をつぐむ中、司会という難しい立場の中でできる限りのメッセージを送ってくれた、とは思います。

それにしても、この不正疑惑の件はアメリカでもぜんぜん盛り上がっていなという印象です。

今回の騒動を受けて海外のSNSなどを見ても、不正疑惑について言及している人はほとんどいなません。
みんなのんきに「ビリー最高」とか「納得できない。ラナ・デル・レイが受賞すべき!」とか。

これはちょっと驚きでした。

今回の不正疑惑って、自分たちが聴いている音楽のトレンドが業界の年配の白人男性によって決められているようなものだと思うのですけどね。
誰かに決められたヒットソングでも、楽しければ良いOK!ということなのかな?わたしはそういうのカンベンですけど。

アカデミー委員会の前CEOが、「女性アーティストはノミネートされるためにはもっと”ステップアップ”しないといけない」と言った舌禍事件と同様に、今回の件もしばらくすると忘れ去られていくような雰囲気です。

来年も同じような疑惑のノミネート方法でノミニーが選ばれ、リスナーは来年も受賞予想であれこれ談議することになりそう。。

まさに「The Show Must Go On」ですね。