シルヴァン・エッソ(Sylvan Esso)新作 『Free Love』レビュー

さすがにこのアルバムを年間ベストに選ぶ勇気はなかったですが、でも大好きなアルバム。

シルヴァン・エッソ(Sylvan Esso)は、2013年に結成されたエレクトロニック・ポップ・デュオで、元マウンテン・マンのヴォーカリストのアメリア・ミース(Amelia Meath)と、プロデューサーののニック・サンボーンによって結成されています。

彼らが今年2020年にリリースした『Free Love』は手作り感あふれるエレクトロトラックに、アメリアの透明感のあるヴォーカルが組み合わさった、チャーミングでクセになるアルバムでした。

こういうエレクトロ・ポップのグループってあまり馴染みがないのですけど、例えるならチボ・マットとか、チボ・マットのユカ・ホンダのグループIf By Yesとかにテイストが近いかも。
チボ・マットやIf By Yesみたいなグループと違って、シルヴァン・エッソはずっとシンプルで飾り気がない音楽で、アヴァンギャルドっぽさや毒はまったく感じさせないのですけど。

マウンテン・マンを捨てて

ヴォーカリストのアメリア・ミースが在籍していたマウンテン・マンは、アパラチアン・フォークというジャンルにカテゴリーされることもある、アカペラ女性ヴォーカル3人組のカントリー/フォークグループ。
地元の顔見知り3人組が自分たちでマネージメントしながら地元でライブを行うという、かなりローカルな活動を行っていたグループだったようです。
とはいえ地道に活動が話題になり全国レベルの知名度を得るまでになったようです。

ただ、けっきょくマウンテン・マンは2010年にアルバム『Made the Harbor』をリリースした後に実質的に解散状態になりました。
シルヴァン・エッソは、マウンテン・マン解散後の2014年にメンバーのひとりであるアメリア・ミースが地元のクラブでニック・サンボーンと出会ったことがきっかけで結成されたそうです。

はっきり言ってこのSylan Essoのようなエレクトロ・ポップってマウンテン・マンの音楽性とはあまりかけ離れていて、アメリアも特に興味のあるジャンルじゃなかったのだと思いますけどね。
アメリアとニックはその後2016年に結婚しているのですが、異なるジャンルのミュージシャン同士が付き合ったので、彼氏のやってる音楽に合わせてみましたということみたいです。

そんな感じでイージーにはじまったグループで、自宅の寝室でレコーディングしていたようなユニットなのですが、2017年の2ndアルバム『What Now』は最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム賞にノミネートされるなど、一般的な知名度とセールスという面ではマウンテン・マンよりも成功を収めることになったようですね。

ガチガチのR&Bが全盛のいま、こういうノー天気なエレクトロ・ポップは貴重です。ガンガン売れてほしいところです。

ちなみにマウンテン・マンの残った2人のメンバーですが、Molly Sarléは『Karaoke Angel』(2019)で、Sauser-MonnigはDaughter of Swordsというユニットで『Dawnbreaker』(2019)と、それぞれソロ・デビューをしており、こちらはマウンテン・マンにテイストの似たカントリー・フォーク調のアルバムをリリースしています。
Daughter of Swordsについては以前ブログにも取り上げています。

マウンテン・マンじたいも、2018年11月に収録されたライブアルバム『Look at Me Don’t Look at Me』が今年2020年8月にリリースされたりもしていますので、もしかしたら近く新録アルバムのレコーディングもあるかもしれませんね。