『多様体:非実在オブジェクトのリポジトリ』

Multiplicities: A Repository of Non-existent Objects | John Zorn

ジョン・ゾーン主宰のTzadikレーベルからリリースされた『Multiplicities: A Repository Of Non-Existent Objects』

メンバーは
Brian Marsella: Fender Rhodes Piano
John Medeski: Hammond Organ
Kenny Grohowski: Drums
Matt Hollenberg: Guitar

この編成は、Simulacrumの3人(Medeski,Grohowski,Hollenberg)にブライアン・マルセラが加わった形のユニットで、同じメンバー編成で2021年に『Chaos Magick』をリリースしています。

以前このブログでは

かつてと違い、現在のTzadikは少数の「コアメンバー」が存在し、そのコアメンバーの組み合わせを微妙に変えることでいくつもの編成パターンを生み出している

ということを書いたのですが、今回のメンバーはそのコアメンバーの中心とも言えるミュージシャンたちでしょう。

そうしてさまざまな組み合わせが生まれる中で、この4人の組み合わせはChaos Magickという固有のグループ名を与えられ、「格上げ」されたようです。

「Multiplicities: A Repository Of Non-Existent Objects(=多様体:非実在オブジェクトのリポジトリ)」というタイトルは、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの著作と思想に触発されて付けられたそうです。

ジョン・ゾーンの今年のアルバムに「Spinoza(=スピノザ)」というアルバムもありましたが、こういう哲学チックなコンセプトが最近のゾーンのお気に入りのようです。
作品じたいに特に哲学的な要素はないと思うんですけどね。ゾーンが自分の曲にもつふわっとしたイメージなんでしょう。
かつて自分のゲームピース作品に「ホッケー」「ラクロス」みたいなスポーツ名を付けたみたいな感じだと。

ともあれ、音じたいはこのメンバーなので、やはりトップクラスにカッコ良いです。

演奏じたいはジャズロック、プログレ風の演奏で「Chaos Magick」からの延長にあると思いますけど、たとえば「マハヴィシュヌのような」とか「T・ウィリアムスのライフタイムのような」みたいな、過去の音源をイメージさせる場面は少なく、まさにこの4人組(=Chaos Magick)の音になっている感じですね。