ドラマーで作曲家のケイト・ジェンタイル(Kate Gentile)によるソロ名義アルバム『Find Letter X』
CDにして3枚組、トータル3時間以上という大ボリュームの作品です。
ケイト・ジェンタイルというと、ピアニストのマット・ミッチェルと共作したアルバム『Snark Horse』も6枚組という、なにか破格のボリュームでアルバムをリリースしていましたね。
なにかこだわりがあるんでしょうか
今回のアルバムのメンバーはこちら
Personnel
Jeremy Viner: tenor saxophone, clarinet, bass clarinet
Matt Mitchell: piano, Prophet-6, modular synths, electronics
Kim Cass: electric and acoustic bass
Kate Gentile: drums, vibraphone, composition.
ピアノのマット・ミッチェルとベースのキム・キャスを加えたトリオは、もうレギュラーメンバーと言ってよいと思います。
サックス奏者のジェレミー・バイナーは、アンナ・ウェバーのアルバム『Clockwise』(もはや名盤と言って良いかも)でマット・ミッチェルと共演しています。
この編成での演奏動画は、このルーレットのレコ発ライブが見れるくらいですね。
このアルバムは、フィジカル3枚組でゆるくアルバムの雰囲気というかコンセプトを変えていてますね。
1枚目はミッチェルのエレクトロニクスを効果的に使い、それと対比したアコースティックピアノの鳴りが美しい現代ジャズに近い演奏。
こういう形でシンセやエレクトロニクスを使う人というのは、他には例えばジェイソン・モランやジョン・メデスキなどがいたのですが、このふたりとも最近では別の方向性の音楽へシフトしていますね。
モランはジャズ界ではビッグ・ネームになりつつあるし、あまり実験的なステージが許される存在じゃなくなりつつあるんじゃないかと思いますけど。
もし彼を聴きにきたファンが、ステージ上でシンセのパラメータをいじりはじめるモランを見たら「頼むからお願いだからアコースティック・ピアノを弾いてくれ!」と(山崎まさよしのファンのように)懇願してしまうかも。
ジョン・メデスキはいまはTzadik関連の仕事が多そうで、自身の好むアルバムを作る時期じゃなさそうですね。
またこの1枚目では、ジェレミー・バイナーのテクニカルで場を埋め尽くす細かいフレーズが、効果的に使われていると思います。
2枚目は、珍しくキム・キャスがエレクトリック・ベースでヘヴィーで重低音なフレーズを弾く、ルインズとかペインキラーをイメージさせるような演奏。
重低音の中で4人の演奏が濃密に絡み合い、他ではあまり聴いたことないような演奏で、このアルバムのハイライトと言えるかも。めちゃカッコいい!
3作目はフリーテンポのフリーインプロっぽい演奏が多いかもしれません。エレクトロニクスも少なめ。
フリーインプロ好きな人には良いかもしれませんが、個人的にはあまり印象に残らず、、
それにしても3時間ものボリュームでテイストの違う曲がちりばめられているので、全編にわたって好みだという人もいなさそうだけど、すべて苦手という人も少なそう
こういう大ボリュームのアルバムをリリースするってのは、リスナーそれぞれが自分の好きな1枚を選んだり、自分で選んだプレイリストを作って聴いてくれということなのかもしれないですね。
ちょっと余談
そういえば、前回の『Snark Horse』のブログ投稿の時は、彼女の名前を「ジェンティル」と表記していました。うかつ。
今回修正したのですが、ブログタイトルのキャッシュにはまだ残っているかも。