ジョイ・ギドリー『Radical Acceptance』

今日は、ジョイ・ギドリー(Joy Guidry)というファゴット奏者・作曲家についての投稿

ジョイはピーボディ音楽院でファゴット演奏の学士号を取得し、マネス音楽学校で大学院演奏学位を取得しています。現在はカリフォルニア大学サンディエゴ校で音楽の博士号を取得中とのことです。

そんなギドリーの、3枚目のアルバムにあたるアルバム『Radical Acceptance』ですが、何げなしに聴いたのですが大好きになったアルバムです。

ジョイのことは、ブログでムーア・マザー(Moore Mother)のアルバム『Great Bailout』について書いていた時にたまたま聴いてみました。
ギドリーが行ったニューヨークのジャズギャラリーでのライブに、ムーア・マザーのアルバムにゲスト参加していたカイル・キッドと、Irreversible Entanglementsでムーア・マザーのバンドメイトであるベーシストのLuke Stewartが参加していたことから、検索にヒットしたという感じです。
(ちなみにムーア・マザーもカイル・キッドもクイアだと公言しています)

『Radical Acceptance』というタイトルも、当然ながらそういったクイアであることや自身の体型についてのメッセージです。

この『Radical Acceptance』ですが、パッと聴いた感じはかなりフリージャズ/インプロよりのアルバムになっています。

カラフルなイラストのアルバムジャケットからは想像できないような音になっていて、かなり意外でした。(ギドリー本人のイラストですがあまり”かわいくない”のですけど)

ジョイは、これまでの学業のキャリアからすると完全にクラシック畑の人なのですが、こういったフリージャズ/インプロも音楽的な興味の対象にあるようですね。

NYtimesのシリーズ記事のひとつ 「5分で好きになるドン・チェリー」にコメントを寄せていたりもしました。

アルバムのが主要なパートは、ギドリーのバスーンのソロもしくはサックスやチェロなど他の楽器とのインプロ。

聴きはじめた時にまず思ったのは「あー、これは聴くのに根気いるやつだ」という感想
例えばまるごと1枚サックスソロみたいなアルバムを想像してもらうとわかりやすいかも。

ですが実際に聴いてみると、『Radical Acceptance』にはそういった「とっつきにくさ」はほぼ無かったのですよね。
これすごく不思議。

「アンソニー・ブラクストンのソロアルトは聴けないのに、ジョイ・ギドリーで聴けちゃうのはなぜだろう?」
とずっと考えているのですが、イマイチ良くわかりません。

バスーンでこういう音楽を演奏するってかなりレアな気もするので、新鮮に聴こえるのか、、(聴いた印象としてはバリトンサックスに近い使われ方なのかもしれないですが。)

もしくはインプロの合間に挟み込まれる電子音やポエトリーリーディングが、アルバムに抑揚を付けているのか、、

このアルバムにはアンビエントっぽい電子音がかなり使われているのですが、凝ったプロセッシングは皆無でチープといえばチープ。

まるで使いたい電子音のイメージはあっても人を雇うカネはないから、自分でソフトシンセで作ってみました、というようにも聴こえます。

ただフリーインプロと電子音、これがつまり緊張と緩和なのかもしれませんが、そのバランスがうまい感じで、「さすがにこの電子音、もうそろそろ終わりでしょ」と思ったくらいのところで終わるジャスト感が心地よいですね。

『Radical Acceptance』の参加メンバーは以下
ベースのNick Dunston以外はほとんど知らないミュージシャンたちですね。

『Radical Acceptance』
Joy Guidry: Electronics, Voice, Bassoon
Maudry Richard Davis, Voice
Oli Harris: Cello
Alfredo Colon: Sax
Jessie Cox: Drums
Nick Dunston: Bass:
Chioneso Bakr: Drums
Hasan Bakr: Drums
Victor See Yuen: Drums

ギドリーは、2024年5月に新作アルバム『AMEN』がリリースを控えています。
これは学位論文のプロジェクトだそうなので、基本的にはクラシックジャンルのアルバムになるんじゃないかと。

修士号を取った後にギドリーがどういう活動をしていくのかはよくわかりませんが、『Radical Acceptance』みたいなアルバムはもう今後聴けないのかもしれないな、とも思いますね。