ついに来た! ジョン・ゾーンのバガテル(Bagatelles)

2021年にリリースされたジョン・ゾーンのバガテルプロジェクトの4枚組ボックスセットですが、トップバッターとして1枚目に起用されたのは前回のマサダプロジェクトに続いてメアリー・ハルヴォーソン・カルテット。

Personnel
Drew Gress (bass)
Tomas Fujiwara (drums)
Mary Halvorson (guitar)
Miles Okazaki (guitar)

バガテルとは

ジョン・ゾーンのバガテル(Bagatelles)について簡単に説明すると、2015年の2か月間で集中的に作曲された300もの膨大な楽曲群のこと
ゾーンは「バガテル・マラソン」という一連のライブイベントの中で、他では見られないさまざまなミュージシャンの組み合わせで演奏してきました。

これは基本的に第二期・第三期マサダと同じスタイルなのですが、楽曲はユダヤ旋法という制約を取り払い、「バガテル」という名前の通り5分以内という短い曲が大半を占めているところが特徴。
ゾーンのインタビューによると、バガテルの作曲はスクリャービンを、とりわけ彼の調性から逸脱した作曲という面を意識して書かれたとか。
えー、わたしはスクリャービンについてはほぼ知識ゼロなので「そーなんですねー!」という感想しか出てこないのですが、、

バガテルプロジェクトは譜面を正確に弾きこなすことが絶対ではないので、ゾーンの書く無調を意識した曲をそのまま演奏するのか調性を持たせて弾くかなどはく演奏者の解釈にゆだねられている面もあるそうです。

メアリー・ハルヴォーソン・カルテット

ゾーンのバガテルは、クラシックやノイズロックなどさまざまなジャンルのグループが演奏していますが、このハルヴォーソン・カルテットの演奏は「ジャズ」

このカルテットが演奏するバガテルは、作曲されたテーマを演奏するパートと即興パートが明確に分かれていたり、片方のギターが全面に出てくるともう一方はサポートっぽいバッキングをするなど、わりとオーソドックスなジャズ演奏という感じ。

マサダの時は2本のギターの音をハルヴォーソンとオカザキのどっちが弾いているのか分からないくらいだったのですけど、今回はハルヴォーソンはエフェクトを効かせたグネグネとしたギターの音色を多用するなど、普段の彼女の演奏に近いですね。
スピーカー左側のディストーション効いた効いたギターがマイルス・オカザキ、右がハルヴォーソンで間違いないですね。

現代ジャズの範疇からは外れていない演奏だと思いますけど、早めのテンポでの疾走感が素晴らしい演奏ですね。ハルヴォーソンの演奏はけっこう難解だと思いますけど、このアルバムはすんなり聴けます。うーん、最高かも。

ブログで取り上げるたびに書いてる気がしますけど、ドラマーのトマ・フジワラはもっと注目されても良いと思うのですけどね。

雑談

このメアリー・ハルヴォーソン・カルテットのレコーディングも1年以上も前ですし、ゾーンのバガテルはずーっと出るかも出るかもと言われていたのですが長いこと待たされて、今回やっと聴くことができました。これはやはりコロナの影響だったのかも。
はじめに4組のアーティストによるボックスセットがリリースされてから、後続のレコーディングの話は全く聞こえてこないですね。

それにしてもバガテルはボックスセットのみということで、ぜんぜんアマゾンみたいなところでは販売しないのですね(わたしはSNSの知り合いに聴かせてもらったのですけど)
クリス・デイビスとか、ジョン・メデスキとデヴィッド・フュージンスキーによるトリオとか、他にも聴きたいグループはたくさんいるので、(マサダの時みたいに)ガンガンリリースしていってほしいところですけどね。