2018年フィンランドでのライブ映像
まるで高円寺百景のような女性ヴォーカル2人
2020年にリリースされたジャズカテゴリのアルバムの中で、今のところトップクラスに好きなアルバムがカヤ・ドラクスラー・オクテット(Kaja Draksler Octet)の『Out For Stars』
カヤ・ドラクスラーはスロベニアのクラーニ市出身のピアニストで、オクテットとしては2017年『Gledalec』からの通算2枚めのアルバムになります。
Personnel
Ab Baars, Ada Rave (Clarinet,Tenor Saxophone)
Lennart Heyndels(Double Bass)
Onno Govaert(Drums,Percussion)
Kaja Draksler (Piano)
George Dumitriu (Violin, Viola)
Björk Níelsdóttir, Laura Polence(Voice)
8人編成と人数は多め。
ラージアンサンブルのような分厚い音を聴かせる訳ではなく、音はミニマルで控えめ。サックスやヴァイオリンなど、みんないっせいにプレイする訳じゃなく「順番に弾く」感じ。
彼女はジャズカテゴリで語られることも多いですが、このアルバムは一聴したところクラシックか現代音楽。ジャズには聴こえないかな。
彼女が全曲作曲しているのですが、彼女の書いた現代音楽っぽくもありどこか東欧の伝統音楽を思わせる曲もこのグループの魅力です。
2人のサックスがアヴァンギャルドでフリーキーな音を担当しているようですが、それに対して二人の端正なオペラチックなヴォーカルが全体のバランスをうまく取っているようです。言うならば楽器的なヴォーカル。
こういうヴォーカルの使い方は(かなり音のテイストは違いますが)高円寺百景の女性ヴォーカルを連想させるかもしれないですね。このグループの2人はもう少しフォーキーな感じのヴォーカルですね。
前作『Gledalec』では冒頭でパブロ・ネルーダの詞を取り上げるなど、メッセージ性の強い歌詞も聴きどころ(対訳ないので意味が全てわからないのですが)
スロベニアからオランダへ
18歳でオランダに移り、それ以来ジャズや作曲を音楽大学で学んできたとのこと。卒業論文はセシル・テイラーのフリー・インプロについて分析していますね。
彼女のHPから卒業論文は読めます(Cecil Taylor: Life as, Structure within free improvisation)
短期間ですけど、アメリカでヴィジェイ・アイヤーやジェイソン・モランからレッスンを受けたこともあるそう。
このオクテットは作曲・アレンジ重視で彼女の活動の中では最もフリーインプロっぽくない感じですね。
Susana Santos Silvaとの共演など、もう少し小編成のグループでは彼女のフリーインプロヴァイザーとしてのプレイを聴けます。
ただ、今はいろんな人と共演しているのですが、オクテット以外の固定グループは無いようで、まだしっくりくる共演者が見つかっていないのかもしれないですね。