ブライアン・マルセラ『Intersection of Dissections』レビュー

Personnel
Brian Marsella(piano)
Trevor Dunn (bass)
Kenny Wollesen(drums)

ジョン・ゾーンが「最高のピアニストのひとり」と呼び、ゾーンが自身の曲を演奏させる場合にまっさきに名前のあがるブライアン・マルセラですが、『Intersection of Dissections』(2019)は彼のピアノ・トリオによるアルバム。

マルセラが自身の曲をピアノトリオで演奏するというフォーマットは、これまでありそうであまり無かったんですね。
これまではMasadaだったりシロ・バプティスタとのBanquet of the Spiritsだったりでの客演がほとんどでした(新作「Gatos do Sul」もおそらくBanquet of the Spirits路線)
そこでのマルセラはさすがに存在感のあるプレイをしていたのですが、それだけに彼のオリジナル曲を演奏するアルバムを聴いてみたかったんです。

そういう意味でこの『Intersection of Dissections』は「こういうのを待ってました!」という感じです。
共演のふたりも、Trevor Dunn、Kenny WollesenというMasadaでも一緒にツアーしているレギュラートリオです。それにしてもこのふたりのリズムセクションの反応の良さは異常ですね。かつてのGreg Cohen/ Joey Baronのように今ではTzadik関連ではベストの組み合わせじゃないかな。

ジャズのカテゴリでピアノトリオというとキース・ジャレットのスタンダーズ・トリオがトップに位置しているようで、それはそれで異論ないのですが、あの3人の神妙で異様に高いテンションが聴いてて疲れちゃうこともある。
それに対してマルセラのトリオはあくまでエンターテイメント。技術的には難しいプレイだと思うし、ジャズピアノにしては異様な音数の多さなのですがスッと楽しんで聴けちゃうところが彼の魅力ですね。

【動画はこのトリオによるライブの模様】

このアルバムはCDなどの販売はなく、サブスクとmp3のダウンロード販売のみということ。特にCDなどの発売予定もないままツアー中の合間にレコーディングしたアルバムという感じなのでしょうか?
やっぱりCDなどのリリースってなかなかハードルが高いんですね。レーベル側としても所属ミュージシャンがレコーディングしたアルバムを全てリリースする訳にもいかないのでしょうね。だからPledge Musicのようなクラウドファウンディングサービスが必要とされるのでしょう。

ただ、このアルバムみたいに本来はお蔵入りになっていたかもしれない音源が聴けるというのは、ファンにとってはうれしい限りですね。