ワイズ・ブラッド『And In The Darkness, Hearts Aglow』

2022年も12月になると、各メディアが2022年の年間ベストアルバムを発表する時期ですね。
このブログでも毎年選んでいるので、そろそろ準備しないと。

12月はそういった年間ベストアルバムの記事を読んで「こういうの評価が高かったんだ!」といろんなアルバムを聴きかえす時期で、
今回取り上げるアルバムもそんな一枚。

ワイズ・ブラッド(Weyes Blood)の彼女の2022年新作『And In The Darkness, Hearts Aglow』です。

彼女は、2019年にリリースしたアルバム4枚目のアルバム『Titanic Rising』が各メディアで年間ベスト10に選ばれるなど大きな話題となっていましたね。

すっかり忘れていましたが、ブログ開設当初にちょこっと感想書いたりしてました
2019年というと、他にはタイラー・ザ・クリエイター『IGOR』、リトル・シムズ『Sometimes I Might Be Introvert』などが人気だった年。

ワイズ・ブラッドという名称は、ペンシルバニア生まれのナタリー・ローラ・メリングによるソロ・プロジェクト名です。
かつてはローカルのオルタナティブ/ノイズ系のバンドで活動していたみたい。

もともとペンテコステ派のキリスト教の家庭で生まれ、そういった組織宗教の信仰のあり方に違和感を感じていたといった生い立ちも影響してか、『Titanic Rising』から現在では、内省的で深淵な作風となっています。

『And In The Darkness, Hearts Aglow=そして暗闇の中でハートが輝く』というタイトルは、そういう意味でストレートでもあります。

もともとワイズ・ブラッドというプロジェクト名はフラナリー・オコナーの『Wise Blood』からとられており、オコナーも(カトリックの多い)アメリカ南部を舞台に世俗と信仰についての本を書き、カトリック教会についてもたびたび発言してきた作家だそうです。

『And In The Darkness, Hearts Aglow』は基本的に前作『Titanic Rising』からの連作となっているようで、映画音楽のようなドラマチックな要素を持つポップスという点では共通していますね。
前作よりもヴォーカルがくっきり歌われているような気もします。
跳躍のない素直なフレーズを一息でつないで盛り上げていくヴォーカルは、バックトラックにぴったりフィットしています(決してうまいヴォーカルじゃないとは思いますが)

ジャンル分けは難しい音楽で、「アート・ロック」の他にも、「チェンバー・ロック」だとか「オルタナティブ・サイケ」とかいろんな呼び方で呼ばれています(自分の感覚では「チェンバーロック」がいちばんしっくりくる呼び名かも)
ちょっと80年代のイギリスのグループっぽい音作りかも?古臭さを感じさせるギリギリで踏みとどまっている感じです(それが逆に新鮮なのかもしれませんが)

年末のメディアのベストアルバム選出では、(『Titanic Rising』ほどじゃないかもしれませんが)今回の『And In The Darkness, Hearts Aglow』もなかなか評価が高そうな雰囲気です。

こういうのがアメリカのリスナーに受け入れられているのはちょっと意外ですね。
東海岸の大学生で、pitchforkとかNPRをよくチェックするリスナーが好みそうなアルバムかも。