お待たせ!ティム・バーン『The Fantastic Mrs.10』

Tim Berneのグループ、スネークオイル(Snakeoil)の新作『The Fantastic Mrs.10』が、スイスのレーベルIntaktからのリリースされました。

Snakeoilはバーンの活動の中心で、その新作を聴けるということはいつでも特別な体験ですね。ファン目線で「新作!新作!ひゃっほう!」とただただ喜んでいます。

Snakeoilはこれまで主にECMからのリリースだったのですが、バーンは2019年にMichael Formanekの「Very Practical Trio」でIntaktレーベルのアルバムに吹き込みを行っており、そこからのコネクションが今回のリリースに繋がったのだと推測できます。

■Personnel
Tim Berne  (Alto Saxophone)
Oscar Noriega (Bass Clarinet, Clarinet [Bb Clarinet])
Ches Smith (Drums, Vibraphone [Vibes],etc)
Marc Ducret (Guitar)
Matt Mitchell (Piano, Synth [Modular Synths])

グループに途中から参加したギターのライアン・フェレイラが不参加で、バーンのファーストコールギタリストであるMarc Ducretが参加しています(困った時のデュクレ)

バーンは「Snakeoil」と自身のグループに名前を付けていながらも、けっこうメンバーは流動的な気はします。かつてのBloodcountもCaos Totaleも、要はその時その時ののティム・バーン・グループに名前を付けただけで、本質的には何も変わらないのだろうと思いますし。

バーンにとって現在の「ティム・バーン・グループ」がこのSnakeoilなのかな、と。

Snakeoilというグループは、かつてのBloodcountからクリス・スピードに代わりオスカー・ノリエガが参加し、ジム・ブラックの代わりにチェス・スミスが参加したグループと考えても良いかもしれないし、Marc Ducret(g)/Tom Rainey(dr)とのトリオBig Satanのベースレスのコンセプトをもう少し大きな編成に展開したものと言っても良いかも。

Snakeoilでもベースレスなところが特徴ですが、キーボードやギターがベースの役割を担うといったわけでもなく、ただただベースパートが無いのですが、別にそれで不足な感じはしないですよね。むしろグループの音の特徴になっている。
ジャズではテンポをキープするのがベースの役割ですけど、バーンみたいな音楽だとテンポキープはそれほど重要ではなく、必要ないという判断なのかも。

メンバーもそれぞれ自分の仕事が忙しくなったり、NYから離れたりして、メンバーをキープするのも難しいと思うのですが、このアルバムでのSnakeoilは、現時点でほぼバーンの理想に近いグループができたと考えているんじゃないでしょうか。
Ches Smithなども数々のアルバム・セッションに参加する人気ドラマーでもあるので、いつまで固定メンバーとして参加してくれるかわからないですし(かつてのジム・ブラックのようにフェードアウトしていく可能性も大きいですし)

マット・ミッチェルとデビッド・トーンによるエレクトリックアレンジ

このアルバムでのバーンは神々しいフレーズを吹いてくれるいつものバーンであり、もうそれだけでこのアルバムは十分と言えるかも。
アルバム全体に漂うエレクトリックな響きは、マット・ミッチェルのシンセ・エレクトロニクスとデビッド・トーンによるアレンジによるところが大きいのではないかと。

マット・ミッチェルはこれまでのアルバムでもピアノとともにelectronicsというクレジットがされていて、今回もモジュラー・シンセというクレジットです。
ソロアルバム「A Pouting Grimace」(傑作!)で展開したジャズとエレクトロニクスの融合を、師匠であるバーンのアルバムにもうまくフィードバックしてくれています。

マット・ミッチェルもかつてのマイルスグループにいたハービー・ハンコック、チック・コリアなどのように、今後グループを抜けて独り立ちしまいそうな雰囲気もありますので、バーンにはなんとか引き留めておいてほしいですね。

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