Nick Dunston『Colla Voce』

ニック・ダンストン(Nick Dunston)といえば、最近ではMary HalvorsonのAmaryllis Sextetの参加が印象深いベーシストですが、アンナ・ウェバーやタイショーン・ソーリーとの共演など、このブログでも頻繁に名前のあがるプレイヤーでもあります

今回は、彼の新作『Colla Voce』の紹介

このアルバムについてはBamdcampのベスト・コンテンポラリー・クラシカルの記事で紹介されていました
即興の要素がほぼ無いからかもしれませんし、Jack Quartetなどが参加しているからかもしれませんが、ジャズだとは全くみなされていないのかもしれません

それにしても、このアルバムについて書かれたweb記事って極端に少ないですね
こういったジャンル横断的なアルバムはなかなか取り上げる媒体が少ないのかもしれません

Colla Voce

まずこのアルバムですが、ダンストンはほとんどベースを弾いていません
本人は、主に作曲と電子音によるポストプロダクションでアルバムづくりに関わっているようです

このアルバムは珍しくアルバム通しで聴くことを強く意識して作られたであろうアルバムで、大きく分けると3パートに分かれています

まず最初にJack Quartetをメインに据えた曲が収められており、サイレンのようなロングトーンを強調したり、銃撃戦のような音を用いたり、およそ「音楽的」とは言えない音の塊を重ね合わせることで曲を構成していきます

ネオ・クラシカルなストリング・カルテットとも違う、J・ゾーンがかつてやったようなアヴァンギャルドさ(と言って良いのかな?)を何歩も先に進めたような、インパクトのある演奏ですね

そのあとに、HYDROGEN/ARGON/OXYGENというタイトルからして1まとまりとわかる曲群が続くのですが、ここで女性ヴォーカル/コーラスをメインにした曲が続きます
この三曲が盛り上がりからするとこのアルバムのハイライトかもしれません

「コーラスというには十分奇抜だけどメレディス・モンクほど突き抜けてない」という感じで、曲を美しく豊かに響かせるギリギリのところで踏みとどまっているバランス感覚が心地よいですね

そして最後のパートでは、ストリング・カルテットとコーラスと電子音と、ここまでアルバムに出た要素それぞれを組み合わせ混在一体となった演奏に移っていきます
電子音もより多めに、音も全体的に分厚くなるのですが、この混沌とした雰囲気もまた良いですね

このアルバムのリリースを知ったのはたまたま(Joy Guidryのアルバムについての投稿)だったのですが、かなりお気に入りになりました

音楽をたくさん聴けば聴くほど、「これまでにまったく聴いたことのないタイプの音楽」に出会える機会は減るわけですが、このアルバムのようなオリジナリティのある音楽はちょっと他に思いつきませんね

余談

ダンストンのプロフィールについて検索すると、Berlin basedという紹介がされることが多いようですね
普通にアメリカで活動するミュージシャンとレコーディングやライブをやっていると思っていたのですが、、
ドラマーのジム・ブラックもヨーロッパに活動拠点を移したりしていましたが、もしかするとアメリカはジャズミュージシャンとして活動するには理想的な国ではないのかもしれません

『Colla Voce』 members

Nick Dunston – compositions, post-processing, double bass
JACK Quartet
Christopher Otto, Austin Wulliman – violins
John Richards – viola
Jay Campbell – cello
Cansu Tanrıkulu – voice, live processing
Sofia Jernberg – voice
Isabel Crespo Pardo – voice
Friede Merz – voice
Maria Reich – violin, viola
Anil Eraslan – cello
Tal Yahalom – guitar
Moritz Baumgärtner – drums, percussion, megaphone

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