Roomful of Teeth『Rough Magic』

グラミー賞も受賞したインディーロック界のヴォーカルグループである、ルームフル・オブ・ティース(Roomful of Teeth)による、前作『The Ascendant』から3年ぶりとなる新作アルバム『Rough Magic』

このアルバムは、以下の4人の作曲家による曲を取り上げた作品となっています。

「Psychedelics」 composed by William Brittelle
「None More Than You」 composed by Eve Beglarian
「The Isle」 composed by Caroline Shaw
「Bits torn from words」 composed by Peter S. Shin

この4つの曲を合わせてもアルバム1枚の収録時間は1時間以内ですから、それぞれの曲はそこまで長くないです。

冒頭の曲「Psychedelics」はいろんな意味で好みの分かれそうな作品
70年代のアルバムのようなチープなシンセ音(作曲者のWilliam Brittelleが弾いてるらしい)がまず耳につきます。
一瞬、ヴァンゲリスの「炎のランナー」みたいな展開や、彼らが頻繁に使うちょっとアジアテイストのコーラス(川井憲次の『AKIRA』テーマみたいな)もあったり。
いつも以上に、曲の展開というよりは、声の「鳴り」みたいなものを聴かせるタイプの曲なのかも(メレディス・モンク的と言って良いのかな)

2曲目の「None More Than You」は8分くらいの最も短い曲
SE的に口腔を使った効果音が挟まれるけど、ベースは調和の取れたコーラスよるオーソドックスな曲

3曲目「The Isle」
これがRoomful of Teethのメンバーであるキャロライン・ショウの曲
ショウは、Roomful of Teethとのコラボ曲「Partita for 8 Voices」でグラミー賞と、そしてピューリッツァー賞を受賞したので、そういう意味でもやはりどういう曲が聴けるのかと興味が湧いてきます。
10分強の短い曲ですが、民族音楽などの要素を入れることなく、
映画音楽を思わせるような穏やかな曲調から徐々にドラマチックに盛り上がり、最後には穏やかで余韻を残して終わっていく、そんなイメージの曲

Roomful of Teethの演奏はあまり動画ないのですが、この曲を歌っている動画がひとつ見つかりました。

4曲目「Bits torn from words」
ピーター・S・シンという人は初めて名前を聞いたのですが、韓国系アメリカ人の作曲家で、完全にクラシック畑の人のようです。

メンバー8人が均等な関係を保つわけではなく、女性ヴォーカルが全面に出て主旋律を歌うスタイルだ。普通のヴォーカル曲だと言ってもあまり違和感はないかも。

Roomful of teethと言えば、トゥバ共和国のホーメイやグルジアンのポリフォニー、韓国のパンソリといった音楽を積極的に取り入れてきたグループですが、今作『Rough Magic』ではそういった民族音楽的な展開は避けているような気もします。

キャロライン・ショウにピューリツァー賞をもたらした「Partita for 8 Voices」でのイヌイット歌唱が「文化盗用」だとしてクレームを入れられたこともあり、もうああいう経験はしたくないと思っているのかもしれないですね。

 

『Rough Magic』以外で、2023年にリリースされたRoomful of teeth関連でもう1曲紹介

クラシックピアニストのアワダジン・プラットがリリースしたアルバム『Still Point』に収録された曲「Untitled Composition for Piano and Eight Voices」で、Roomful of teethと共演しています。

この曲ですが、作曲はジャズドラマーで近年はオペラを作曲するなど作曲家としても注目を浴びるタイショーン・ソーリーによるもの。

タイショーン・ソーリーの現代音楽的のかなりとっつきにくい側面が出た曲で、不協和音がサスペンス風味も感じる曲ですが、ソーリーのジャズではない一面を知ることができる曲ですね。

 

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