アイリッシュトラッドとインド音楽を融合したMishraの2ndアルバム『Reclaim』

イギリスのシェフィールドを拠点に活動を行うフォーク/トラッドグループ、ミシュラ(Mishra)
2019年の1stアルバム『Loft Tapes』に続く2ndアルバム『Reclaim』の紹介

ミシュラ略歴

ミシュラは、アイリッシュ・トラッドを基本に、アメリカーナやインド音楽などのグローバルな音楽をミックスした曲を演奏するグループ。

2017年にシェフィールド大学の音楽学生として初めて出会った、バンジョー奏者でヴォーカリストのケイト・グリフィン(Kate Griffin)と、ギターやアイリッシュ・ホイッスルなど多くの楽器を演奏するマルチ奏者フォード・コリアー(Ford Collier)の2人を中心に結成されたグループ。

この2人に、ダブルベースのジョス・マン=ヘイゼル(Joss Mann-Hazell)と、シェフィールド大学のレジデンス・ミュージシャンであるタブラ奏者のジョン・ボール(John Ball)が加わっています。

結成翌年2018年のケンブリッジ・フォーク・フェスティバルで第1回クリスチャン・ラファエル賞を受賞し、この賞金を使って1stアルバム『Loft Tapes』は作られたそうです。

メンバーにタブラ奏者がいることからわかるように、インド音楽が全面的に使われている印象ですね。
『Loft Tapes』ではJogというラーガをモチーフにした『Jog for Joy』という曲を演奏したり、インド音楽で用いられるフレーズを3回繰り返すエンディング形式であるティハーイはアルバムを通して何度も使われています。
タブラはドラムセットやパーカッションと違って明確なピッチ感があるので、タブラを使うだけでかなり違った雰囲気になりますね。

まあこういう演奏は言ってみれば「なんちゃってインド音楽」ではあると思いますし、タブラ演奏もガチのインド音楽を聴いている人からすればアマチュアレベルだと思います。
ただ純粋なアイリッシュトラッドとは違うニュアンスを出すためのアクセントとしては、このインド音楽風味はなかなか効果的に使われていると思いますね。

とはいえ、このグループのいちばんの魅力はなんと言ってもケイト・グリフィンのヴォーカルでしょう。
トラッド音楽のヴォーカルの良し悪しは声質がいちばんなのだと思いますが、わたしは彼女の声は大好きになりましたよ。

また彼女はバンジョー奏者としてもかなりのテクニシャンだそうです。
クロウハンマー・バンジョーという通常とは違ったピッキング方法で演奏するそうです。オールドスタイルな弾き方だとか。

2ndアルバム『Reclaim』

1stアルバム『Loft Tapes』は基本的には学生だったメンバーが当時演奏していた曲を持ち寄ってホームスタジオでレコーディングされた手作り感のあるアルバムでしたが、今作『Reclaim』は当初からミシュラというグループとしてアルバムを出すことを念頭に作られたアルバムということになります。
そういう意味では今回のアルバムが事実上のファーストアルバムと言えるかもしれません。

1stアルバムと比べると、よりジャンルレスな曲が多くてポップスっぽく聴こえる曲も多いですね。
特にスローテンポの曲などではタブラは使われず、その代わりにカラバス(ひょうたん)というアフリカンパーカッションが使われることが多くなったみたいです。
(タブラはピッチ感があるのでどうしてもインド音楽っぽく聴こえるし、正直スローテンポの曲には全く向いていないパーカッションだとは思うので)

そのため、タブラ奏者のジョン・ボールはタブラを演奏する代わりにサントゥールを多く弾いているのですが、インド音楽っぽいフレーズは控えめですね。

こういった微妙な路線変更は、アイリッシュトラッドっぽい1stアルバムが好きだった人にとっては「コレじゃない」「なんか普通のバンドになった」と思うかもしれないですけど、個人的には演奏の幅が広がって良いんじゃないかと思いますね。

このブログってそんなにマイナーなミュージシャンを取り上げることってそんなになくて、ある程度は有名なミュージシャンだったり話題になったアルバムについて書くことが多いと思うのですけど、ミシュラに関してはSNSでたまたまその存在を見つけたのですが、ほとんど話題にはなっていないんですよね。

この2ndアルバム『Reclaim』のリリースをきっかけに世間で話題になるかというと「そんなことは無さそう」というのが正直なところです。
良いグループなのにホント残念です。