ミシェル・ンデゲオチェロ『The Omnichord Real Book』

ミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)の新作『The Omnichord Real Book』がリリースされていました。

彼女のこれまでのアルバムだと、ガイド本やweb記事では『Plantation Lullabies』(1993)、『Peace Beyond Passion』(1996)など、初期のソウル/ファンクっぽいアルバムが良くあげられます。

彼女のデビューはもう30年前なのに、最初期のアルバムのことを持ち出されるのは本人も良い気はしないのかもしれませんけど。

この2枚以降のアルバムは正直あまり印象に残っていないのですが、今回の『The Omnichord Real Book』はなかなか良いアルバムですね。

それにしても、いま現在の彼女の活動への世間一般の彼女への評価ってどんな感じなのでしょうか?
少なくともミュージシャンの間では、別格的な扱いというか、好きなアーティストとして彼女の名前があがることは多いです。

今作『The Omnichord Real Book』ですが、Blue Noteレーベルに移籍してのリリースというのも話題になっていますね。
ここ最近のアルバムは、ずっとNaïveという(クラシック系のカタログが多い)フランスのレーベルからリリースしていました。

もともとは彼女はジェイソン・モランやロバート・グラスパーらジャズ系ミュージシャンとも数多く共演してきましたが、最近では、セッション系のミュージシャンを起用し、メンバーをあまり変えずに固定メンバーでアルバムを制作してきたようです。

今作はBlue Noteレーベルに移籍したということで、再びジャズ・ミュージシャンを多数起用するスタイルを採用したようです。
参加したメンバーは、Jason Moran, Ambrose Akinmusire, Joel Ross, Jeff Parker, Brandee Younger, Julius Rodriguez, Mark Guiliana, Cory Henry, Joan As Police Woman, Thandiswaなど

実際にアルバムを聴いた感想ですが、まずイマイチな点をあげますね(イマイチな点はそんなに多くないです)

特に1曲目などで聴ける、アルバムのところどころに出てくるシンセ音やプログラミングされた電子ドラム音ですけど、(そういう狙いなのでしょうが)響きがチープで、何となく不自然だし、少なくともあまり効果的に使われている気はしませんでした。

ちなみに、タイトルの『Omnichord Real Book』にあるOmnichordというのは日本の鈴木楽器製作所がかつて制作していた電子楽器
コロナ禍のロックダウンの中でンデゲオチェロは、この楽器を使って音楽制作を行っていたようです。

こういった電子音はほとんどが完成したアルバムからは消えているのですが、アルバム制作の思入れなのか、ところどころ残しているようです
この電子音がけっこう耳について気になるので「全消ししても良かったかも」とは思いました。

はっきりと気になった点はそのくらいかな。

18曲73分と長いアルバムでいろんなタイプの曲が混在しているのですが、アルバム全体を見渡すと、ポップでフォーキーな曲も収録されていて、例えば「Tower」という曲などは、まるでエイミー・マンの曲かと思うようなアレンジでした。

このような曲調は、これまでの彼女のアルバムにはない新たな魅力だと思うし、彼女の装飾の少ない抑えたヴォーカルに合っていると思います。

話題になっているジャズミュージシャンですが、そこまで目立っている訳ではなくソロパートなどもないのですが、R&B/アフロビートっぽい雰囲気を出したい場面でピンポイントで効果的に使われています。
(参加メンバーの演奏目当てで聴いた人は期待外れかも)

デビュー当時はともかく、その後のンデゲオチェロのアルバムはジャンルレスっぽい音で、そこが押しが弱い印象を持っていたのですが、今作はイメージチェンジという感じですね。

前作『Ventriloquism』がいろんなジャンルの曲をカヴァーしたアルバムだったので、前作の雰囲気を踏襲しつつもスケールアップさせたのが今作『Omnichord Real Book』と言えるのかもしれません。

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