プリンス『Diamonds And Pearls – Super Deluxe Edition』

さあ、プリンスファンのみんな、パーティだよ!

というわけで、プリンスの1991年の『Diamonds and Pearls』がスーパー・デラックス・バージョン(以下D&P SDE)となってリリースされました。

2016年にプリンスが亡くなったあと、遺産管理団体がペイズリー・パークにある音源の保管金庫を文字通りドリルでぶち破って、その中に保存されている数々の未発表音源をリリースしてきました。

アルバムでいうと2018年の『Piano & A Microphone 1983』くらいからですかね。
このブログでも2020年の『Welcome 2 America』、2021年の『サイン・オブ・ザ・タイムズ』と、そのつど感想を書いてきました。

プリンス・エステートの話では、「1年に1枚のペースで過去音源のリリースをしていきたい」という意向だったと記憶しているのですが、2022年は特に過去音源のリリースはありませんでした。

2022年は、6年にもわたる遺産相続をめぐる裁判が決着するという出来事があったので、そちらに忙しくて過去音源リリースはスキップされたのかもしれません。

裁判の結果じたいは「いろんな人に分配されたんだな」くらいで、どうということもなかったのですが、その後にこのD&P SDEがリリースされたことを考えると、裁判の結果によってこの過去音源のリリース方針は維持されたようですね。

Diamonds and Pearls

今回の『Diamonds and Pearls』というアルバムですが、『Lovesexy』『グラフィティ・ブリッジ』などの作品でかつての栄光を失いかけていたプリンスが、再びスマッシュヒットを飛ばしシーンのセンターに戻ってきたアルバム、という位置づけらしいです。

ただ、D&P SDEのリリースに関しての反応を読んでも、プリンスファンにはあまり評判良くないアルバムですよね。
やっぱり全編にちりばめられたラップが影響しているのかな?

作曲、サウンドデザイン、ギタープレイ、そのどれを取ってもケタ外れの才能を見せつけたプリンスも、ことラップに関しては、ファンも「やめときゃ良いのに…」「他にやることがあるだろう」と思っていたことでしょう。わかります、その気持ち。

ところで今回のD&P SDEをレビューしたpitchforkの記事に「プリンスは当時、C+Cミュージック・ファクトリーのファンだったと言われている」と書かれていたのですけど、これ本当なのかな?

また、今回のD&P SDEのスリーブには、かつて別のアルバムで共演したパブリック・エネミーのチャック・Dのコメントが載っているそうで、当時のグループに在籍していた元ダンサーでラッパーのトニー・Mをほめているそうです(これはさすがにお世辞と思いますが、、)

個人的には、『Diamonds and Pearls』の印象は

「プリンス最高のアルバムじゃないかもしれないけれど、みんなが言うほど悪くない。あと”Gett Off”は最高」

という感じ。

自分のイメージするプリンス像というと、このころの衣装とかMVのヴィジュアルがイメージに近いのですけどね。

D&P SDEの注目はというと、やっぱり未発表曲ということになるんでしょうか。

マルティカやロージー・ゲインズなど、他の人に提供した曲のプリンス本人バージョンというのも多いみたいです。
(自分はサブスクで聴いているので)ファン作成のページでクレジットなどを読みながら聴くのは楽しいですね。

これまでのプリンスの蔵出し音源と同様に、今回のD&P SDEもメインはアウトテイク楽曲であり、つまるところアウトテイク集はまるで一度絞ったレモンからさらに果汁を搾り取るようなものですが、この頃のプリンスはワーナーからかなりリリースを制限されていた時期なので、アウトテイクと思えないほどハイレベルな曲も含まれていますね。

これまでのプリンスの未発表音源リリースの中では、いちばん「お得感」のあるアルバムかもしれません。

未発表曲も悪くないんですが、聴いていて楽しいのはむしろライブ盤の方じゃないでしょうか。
プリンスのライブはYouTubeなどにもけっこうあがっていますが、正規盤音質で聴けるのはうれしいですね。
ブルーレイ映像もあるらしくてなかなか評判良いみたいですが、そのためにフィジカルで買うのはちょっとためらわれますが、、

プリンスが最もハードワーキングで、リリースを制限され結果として未発表の素材が積みあがっていったのはワーナー時代なんでしょうけど、そう考えると毎年行われる未発表曲リリースもそろそろ終わりが見えてきたということなんでしょうか。

プリンスファンは「全部フィジカルで買うから倉庫の音源すべてリリースしろ」と思っているかもしれませんが、「明らかにボツ音源だろう」というものまでリリースされるとどうかと思いますし。

ちょうどこのブログを書いている時に、ビートルズの音源をAIで処理した新曲『Now and Then』という曲がリリースされていました。

プリンスの音源リリースは、この曲を待つビードルズファンみたいに「未発表曲が聴ければあとはなんでも良い」みたいになってほしくはないものです。

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