ピアニストのマッコイ・タイナーが2020年3月6日に亡くなったというニュースが伝えられました。81歳でした。
雑誌の特集記事やいろんなミュージシャンの追悼コメントが公開されていますね。
彼くらいになると録音アルバムもたくさんあって、今回の報道を受けていろんなアルバムを紹介してくれているのですが、今回はそのうちの1枚を聴いてみた感想を書いてみようかなと。
このブログではマッコイ・タイナーみたいな巨匠のアルバムはあまり取り上げないのですけどね。彼のアルバムくらいになるとレビューや有益な情報はウェブ上にたくさんありますし。ただまぁこんなタイミングじゃないとマッコイ・タイナーのアルバムについて書かないと思うので。
マッコイ・タイナー『サハラ』
■Personnel
Sonny Fortune (as, ss, fl)
McCoy Tyner (p, koto, fl, per)
Calvin Hill (b, reeds, per)
Alphonse Mouzon (ds, tp, reeds, per)
『サハラ』は1973年のアルバム。
ジョン・コルトレーンが1967年になくなり、その後に自身のグループを率いて活動を開始したタイミングのアルバムで、Milestoneレーベルでのファースト・アルバムだそう。
別にこのアルバムが彼の最高傑作だとか愛聴盤だとかいう訳じゃないですけど、週末に聴いてみたアルバムです。
それにしてもこのアルバム、素晴らしいですね。
この疾走感、ドライブ感。最高じゃないですか。
シーツ・オブ・サウンドとかそういうの
いわゆる「シーツ・オブ・サウンド」と呼ばれるスタイルだと言われているアルバムのようで、あまりこの辺の用語の定義にくわしくないのですけど、このアルバムに限って言えばとにかくテンポが速い、速い。
メタルの速弾きとかは、バックのテンポはそのままでソロの音をどんどん速くしていっていますけど、このアルバムなんかはベースも、ドラムもみんな一緒に速い。
いままでと同じフレーズを弾いていても、曲のテンポが極限まで速くなると音が敷きつまっちゃう、みたいなのが「シーツ・オブ・サウンド」なのかな、と。
「この曲、倍のテンポで演奏するとめっちゃ大変だけど、カッコいいぞ!」みたいな。
ジャズのスウィング・ビートに限らず音楽の「グルーヴ」は、心臓とか呼吸のテンポとか、そういうフィジカルな感覚から来ています。
人それぞれがもっているテンポというか、テンポからのズレが音楽的な心地よさにつながっているそうです。
このアルバムみたいに極限まで曲のテンポをあげるような試みも、「いかに心地よいグルーヴを鳴らすか」という意図があったとすれば、あくまで1960年代のジャズの延長線上にあったものと考えられるのかも。
70年代はフュージョンやロフトジャズ、スピリチュアルジャズといった動きが活発になってきます。
このアルバムでもなぜか琴が使用されていたりと、(コルトレーンのインド音楽のような)何か東洋の精神性みたいなものを表現しようとしているのかもしれないですが、いかにもぎこちない感じですね。70年代ジャズにありがちな時流にのったコンセプトなのかもしれないですね。
隠そうにも隠せないジャズ・スピリット。
やっぱりマッコイ・タイナーはある意味オーセンティックなジャズ以外は演奏できなかったんじゃないかな、とこのアルバムを聴いても感じますね(褒めています)