Linda May Han Oh『Walk Against Wind』

少し前の動画(2019.6.28)ですが、YouTubeを見ていてちょっと気になった動画があったので、今日はその紹介です

※サムネイルをクリックすると動画元へジャンプします。

この動画はジャズベースプレイヤーのLinda May Han Ohと、タブラプレイヤーのSuphalaがセッションした様子。
タイトルの「100」というのはSuphalaのタブラの師匠でもあるアラ・ラカの100回目の誕生日に捧げた曲ということらしい。
(アラ・ラカはラヴィ・シャンカールのタブラ伴奏者でザキール・フセインの父親でもある、まさにタブラの世界ではレジェンド)

Suphalaもクラブミュージックっぽいアルバムをプロデュースしたり、Tzadikレーベルからアルバムをリリースしたりと要注目のミュージシャンなのですけど、ここではベースのLinda May Han Ohについて書きます。

Linda May Han Oh プロフィール

Linda May Han Ohの名前は珍しい響なのでなんとなく頭の隅にひっかかっていました。どうもマレーシア生まれで中華系の女性ベースプレイヤーのようです。
実はわたしの持っているアルバムでもDave DouglasとJoe LovanoのグループSound Printsのアルバムに参加していました。

彼女はマレーシアの中華系家庭に生まれ、その後に家族でオーストラリアに移住しようです。特に音楽一家という訳ではなく子供の習い事としてピアノなどを4歳からはじめ、高校のバンドでベースを弾き始めたとのこと。
彼女はオーストラリアで音楽大学に進み、2008年にはニューヨークに移住し、その年にManhattan School of Musicで学位を取得したそうです。

SNSのフォロワーさんの記事で知ったのだけど、ベーシストのリンダ・メイ・ハン・オーは音楽大学の卒業論文で、ホランドの演奏のインド音楽パターンについて取り上げているようです。
この論文は公開されていてここで読めます。
このセッションは彼女のインド音楽へのオマージュから実現したのかも。

デビュー後、すぐさま人気ミュージシャンに

彼女はすぐその年の2008年にデビューアルバム『Entry』をリリースしています。
”女性”で”アジア系”という出自は、周りから「ジャズなんて演奏できるの?」とバイアスのかかった評価をされそうなのですけど、彼女はそれをはねのけてアメリカに来てすぐにプロとして活躍しています。これってけっこうすごい事ですよね。いまさらながら応援したくなります。

彼女は、その翌年の2009年のセロニアス・モンク・コンペティションでもセミファイナリストに選ばれています。
(ちなみにその年の優勝はBen Williamsと言うベーシスト。彼はPat MethenyのUnity Band でベースを担当していましたね)

そう言えばLindaさんは2019年のPat Methenyの来日コンサートでベースを弾いていたようですね。現在のパット・メセニーのワールドツアーの正式ツアーメンバーのようです。

Linda May Han Oh 聴いてみた

彼女のベースを聴くと、ラインも滑らかであまりブルースっぽい(暑苦しい)ノリは無いみたい。もともとクラシックのトレーニングを受けたからでしょうか。
曲の構成からアレンジなどもその場のアドリブと言うよりあらかじめ作り込まれていて、聴く方もパワーが必要です。その分取っつきにくいという印象を持つ人もいるかも。
こういう感じってうまく説明できないのですけど、「Joshua Redmanのサックスみたいな」と言えばわかってもらえるかな?
特に2019年にリリースした『Aventurine』などはヴァイオリンやチェロなどが参加して、もうクラシックを聴いているような気分になります。

おすすめアルバム

もし彼女のリリースした中でアルバムを1枚選ぶとしたら『Walk Against Wind』かな。
彼女のアルバムの中でいちばんストレートなジャズを演奏しているように思います。とはいえたまに彼女自身の歌とか入る場面もありますが、まぁご愛嬌ですかね

『Walk Against Wind』のメンバー

Linda May Han Oh – Bass
Ben Wendel – tenor saxophone
Fabian Almazan – piano ← Lindaさんの旦那さんですね
Matthew Stevens – Guitar
Rudy Royston – drums

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