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シマロン(Cimarrón)が奏でる「平原の音楽」

今回の投稿は、コロンビアのCimarrón(シマロン)というグループの2019年アルバム『Orinoco』の紹介。

Cimarrón(シマロン)は、2000年にアルパ(ハープ)奏者のカルロス・ロハス・エルナンデス(Carlos Rojas Hernández)がコロンビアで結成したグループで、ホローポ (Joropo)というジャンルを代表するグループです。

中心メンバーでグループの設立者のカルロス・ロハス・エルナンデスさんは、2020年の1月10日心臓の合併症のため65歳で亡くなっています。この投稿からちょうど一年前ですね。

Joropo(ホローポ)

ホローポ は「平原の音楽」と訳される “música llanera “としても知られているベネズエラからコロンビアにかけて広がるリャノ地方が発祥の音楽で、ワルツに似たリズムと、ファンタンゴのようなダンスで構成される祝祭的なクレオール音楽です。

シマロンのスタイルはホローポの伝統にのっとりつつもかなり現代的だと言われていて、音楽的には4分の3拍子と8分の6拍子を交互に使うなど複雑なポリリズム・パターンと、ドライブ感あふれる演奏が特徴。
とにかくスピーディーでテクニカルなフレーズをバシッとアンサンブルで決めるところが最高にカッコ良いのです。

このあたりの感覚は伝統的なホローポというよりもむしろフラメンコ(やその影響を受けたイベリア半島の音楽グループ)に近いですね。
オーソドックスなホローポは、例えばベネズエラの歌手チョロ・バルデラマのように、もう少しSSW的というか歌謡曲的な音楽ではあるようです。

伝統的なホローポバンドは、
〇クァトロ・リャネーロ: ハワイのウクレレに非常によく似た4本弦の小さなギターで、ハーモニックとリズムのサポート。
〇ハルパ(ハープ):ジョロポの最も重要で特徴的な楽器。メロディとカウンターメロディを担当。
〇バンドーラ: 洋ナシ形の4弦ギター。その独特の音(セグンデオと呼ばれる)がジョロポの特徴となっている。
〇マラカス・ラネラス(Maracas Llaneras):いわゆるマラカス。リズム担当。
が主に使われます。

シマロンはこの伝統的な編成にアコースティックベースとカホンが加わっていますね。
基本的にインスト演奏が多いのですけど、曲によっては歌手が加わるという編成です。
男性シンガーが在籍した時期もありましたが、この『Orinoco』では全編アナ・ヴェイドー(Ana Veydó)さんが歌っています。

「ラテン音楽」というと大きく区分すると中南米の音楽の総称なので、かなりいろんなジャンルを含む言葉ですね。
カエターノ・ヴェローゾやブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ、アストル・ピアソラも広い意味でラテン音楽になるのかも。
ワールド系音楽が好き!と言いつつ、個人的にはラテン音楽全般はあまり好みではないのですよね。

ただシマロンみたいなアップテンポのダンス音楽っぽいグループは例外的に大好きなのです。
他にもたとえば、ロス・ロボスのアルバム『La Pistola Y El Corazón』とか、コロンビアのトト・ラ・モンポシーナ(Totó la Momposina)みたいなのとか。

グラミー賞ノミネート

シマロンは2000年に結成ということでかなりのベテランなのですけど、これまでにリリースしたアルバムのうち、『Sí, soy llanero』(2004)がグラミー賞のBest Traditional World Music Albumにノミネートされ、『Orinoco』(2019)もラテングラミー賞にノミネートされるなど、国際的にはかなり前から高い評価を得てきたグループだったようです。

『Sí, soy llanero』などはわりと伝統的なホローポに近いと思うのですが、 『Joropo Music From the Plains of Colombia』(2011)くらいから、一部のメンバーが若手にに交替していまのスタイルが固まってきたよう。

リーダーのカルロス・ロハス・エルナンデスさんが亡くなって、今後グループとしてどうなるのか良くわかりませんが、残っているメンバーもテクニシャンぞろいなのでぜひ活動は続けてほしいなと思います。

トリビア

リーダーのカルロスさんの音楽キャリアは長く、1982年にスウェーデンのストックホルムで行われた作家ガブリエル・ガルシア・マルケスのノーベル文学賞授賞式にコロンビア民俗学の代表団の一員として同行したそうです。
ちなみにこの一団には同じくコロンビアのトト・ラ・モンポシーナも同行していたとか。

ノーベル賞授賞式は、けっこう著名なミュージシャンがパフォーマンスしているのですよね。たとえばイランの女性弁護士シーリーン・エバーディーさんの授賞式でのモハメド・レザ・シャジャリアン、パキスタンの人権運動家マララ・ユスフザイさんの授賞式でのラーハット・ファテ・アリ・ハーンなど。

ノーベル平和賞じたいは選考も含めてアレな気はしますけど、授賞式のパフォーマンスはその国の代表的なミュージシャンをおそらく自薦していると思うので、すごく興味深いですね。