ドリス・エル・マルーミ(Driss El Maloumi)は1970年モロッコ生まれのウード奏者で、彼の新作アルバム『Aswat』の紹介
彼は現在はヨーロッパ(フランスやベルギーなど)などフランス語圏で活動をしているようです。
アルバムの参加メンバーはこちら
Driss El Maloumi : Oud & Vocals
Lahoucine Baqir : Daf, Darbouka, Req & backing vocals
Said El Maloumi : Daf, Zarb, Oudou, Cajon & backing vocals
Karima El Maloumi : Vocals
2013年にリリースされたアルバム『Makan』も同じこの4人でレコーディングされており、活動歴の長いレギュラーメンバーなようです(4人中3人が同じEl Maloumiという名前なので、親族なんじゃないかと思いますが)
アラブ音楽でパーカッションはあまり前面に出てこないのですが、そんな中でパーカッションが2人いるという編成が音に厚みを増していて、なかなか良い感じなのです。
アルバムのリリースコンサート動画がアップされていましたが、これを見ると演奏の様子が良くわかりますね。
曲の途中で頻繁にパーカッションを変えたり、カホンやシンバルを使ったりとかなり趣向を凝らしています。
ドリス・エル・マルーミの演奏も、ウード単体で技巧を聴かせるというよりは、パーカッションとの掛け合いがあったりとエンタメとして聴かせることを強く意識しているようです。
(少なくともアラブ圏以外で活動している奏者に限って言えば)、アラブ音楽に他ジャンルの要素を取り入れることは必然と言えるのだと思いますが、このアルバムも例外ではありません。
アラブ音楽の他ジャンルの影響は別に最近の話ではなく、おそらくアラブ世界の人が他ジャンルに触れることができるようになってからずっと続いている話だとは思うので、もはやそれがある意味では伝統というか「アラブ音楽ってそういうものだ」とも言えるのだと思いますが。
特に海外で活動するアラブ音楽家が、おそらく一番多くの人が影響を受けているのがクラシックで、ドリス・エル・マルーミも、ウードとシンフォニー・オーケストラのためのインストゥルメンタル作品『Tafassil』を今後リリースするようです。
一方で、このアルバムでは楽器とパーカッションの掛け合いは、フラメンコやインド音楽のような要素を強く感じますね。
この『Aswat』も、単に「アラブ楽器を使ったフラメンコ」「アラブ楽器を使ったジャズ」にならずに、アラブ音楽の豊かなフレージングを残しているところが聴きごたえがあります。
数曲で歌われるヴォーカルもアルバム全体のアクセントとなってて飽きさせないですね。
余談1
ドリス・エル・マルーミは、マリのコラ奏者のバラケ・シソコ、マダガスカルのヴァリハ奏者のラジェリーとともに “3MA” という弦楽器ユニットを組んでいて、来日もしているようです。
このユニットはほぼ3人の演奏のみで構成されているのですが、シンプルな弦の響きが心地よいアルバムでしたね。インドネシアのカチャピ・スリンを少し思い出しました。
余談2
これは『Aswat』のジャケットを見た時のわたしのSNS投稿(ただの小ネタですが)
でもさすがにマルーミはシャヒーンのアルバムの存在は知っていると思うので、ちょっと意識したのかも
今年出たウード奏者Driss El Maloumiの新作のアルバムジャケットは、サイモン・シャヒーン「Blue Flame」のアルバムに雰囲気似てる (どーでも良い話だけど、、) pic.twitter.com/7GRrMYMgLW
— nono (@nono_dtm) July 3, 2023