ザウォセ・クイーンズ『Maisha』

リアルワールド・レコードの新作は、ザウォセ・クイーンズ(Zawose Queens)によるデビューアルバム『Maisha』

このアルバムは先行シングルがすごく良くてリリースを楽しみにしていたアルバムですが、期待を裏切らないアルバムでした

かつてリアルワールドからアルバムをリリースしていたタンザニアのワゴゴ音楽(というらしいです)の第一人者であるフクウェ・ザウォセがいましたが、名前から想像つくように、このアルバムは彼の娘のペンド・ザウォセと孫娘のリア・ザウォセのふたりによって結成されたグループです

リアルワールドはレ・アマゾネス・ダフリクの成功以降、レーベルをあげて女性アーティストをプッシュいるのかもしれません(先日ブログで取り上げたBab L’ Bluzとかもね)

フクウェ・ザウォセは、WOMADに頻繁に出演したりピーター・ガブリエルとのツアーに同行したり、初期のリアルワールド・レーベルにおいてはアフリカ音楽を代表するミュージシャンだったんじゃないかと思います

ただ、彼のアルバムは当然聴いたことはあるのですが、正直あんまり好きなタイプの音楽ではなかったんですよね

ポリリズムで演奏される曲は、パッと聴いたところはシンプルですがそれでいてズレた感覚があり、なんというかわたしは捉えどころがない音楽に感じてしまって
ああいったアルバムを豊かな音楽として楽しむのは、何か音楽的な素養かコツのようなものがあるのかもしれませんが

フクウェ・ザウォセは2003年にHIVで亡くなり、さらに「類まれな才能を持つ」とされフクウェ・ザウォセのアルバムやライブでも中心的な役割を果たしていた甥のチャールズさんも亡くなったことで、フクウェ・ザウォセの音楽は4人の妻との間の20人近くの子ども、そして今では80人近い孫に引き継がれています

フクウェ・ザウォセにとって音楽はファミリー・ビジネスであり、亡くなる直前に一族総出で作った『Zawose Family: Small Things Fall From Baobab Tree』というアルバムもあったようです

このアルバムは当初リアルワールドからリリースされたとどこかで読んだ気はするのですが、自主配給盤?なのかもう流通していないようです(日本盤の中古とかならあるかも)
このアルバムにはザウォセ・クイーンズのペンドさんも参加していましたね。

現在は、フクエの若い息子であるムサフィリ(Msafiri Zawose)が一族の代表という立場のようで、ザウォセ・クイーンズのふたりも以前にムサフィリのソロアルバムに参加したりもしていましたね

このアルバムの最も素晴らしい部分は、女性ふたりによるコーラスじゃないかと思いますが、タンザニア音楽の中ではキリスト教の影響を受けた合唱は重要な要素となっているそうです。
wikiによるとクワヤ(Kwaya)というらしいです。クワイアが現地語でなまっている呼び名ですね。

このきらびやかでパワフルなコーラスはザウォセ・クイーンズの音楽の最良の部分じゃないかな

一方、このアルバムもふたりのコーラスやイリンバの音などのワゴゴ音楽に特有の音のみでなく、ドラムセットで演奏されているっぽいいかにもシンコペートされたリズムなど、ワゴゴ音楽以外の要素も多い印象です

(他の国もそうですが)あまりアフリカ音楽に古き良き伝統を守るという概念はなさそうなので、がっつり西洋ポップスっぽくなるのは割と良くあること

ただこの『Maisha』ではそういうあからさまな西洋ポップスっぽさは巧みに消されていて、バックトラックの質感というか音の肌触りがふたりのコーラスと違和感なく溶け合っていて良い雰囲気を演出しています

今作のプロデューサーは、ひとりはNubiyan Twistのリーダーであるトム・エクセル
もうひとりは、Nubiyan TwistのエンジニアでもありNilufer Yanyaなどワールド系っぽいアーティストの仕事も多いOli Barton-Wood

ロンドン出身のガーナ人バンド Onipaのアルバム『WE NO BE MACHINE』をトム・エクセルがプロデュースし、このアルバムにザウォセ・クイーンズのふたりがゲスト参加したことが、今回のコラボにつながったようです

(正直Nubiyan Twistというグループにはあまり興味を引かれないのですが)今作はこのふたりのプロデュースワークがこの作品を特別なものにしている、と思いますね