シマロン(Cimarrón)のニューアルバム『La Recia』レビュー

今回はコロンビアで活動するシマロン(Cimarrón)がリリースした新作『La Recia』について。

シマロンは、ホローポ(Joropo)と呼ばれるベネズエラからコロンビアに拡がるリャノ地方で演奏されるダンス音楽を演奏するグループです。

シマロンが2019年にリリースした前作『Orinoco』について、またホローポという音楽についてもこのブログでも取り上げています(こちら

『Orinoco』の投稿って別にリリースした時じゃないのですよね。このブログはだいたいは新作を取り上げることが多いのですが、『Orinoco』は例外。

音楽の話題についてのブログでいつも頭を悩ませるのは、「いかに自分がこの音楽を気に入っているか」を読んだ人に伝えることですよね。

そんな中でもしシマロンの良さについて説明するなら

「基本ニューアルバムしか取り上げないこのブログで、例外的に旧作を紹介したくなるほど好き」

という表現になるのかも。

La Recia

シマロンはグループの設立者でリーダーのアルバ奏者カルロス・ロハス・エルナンデスさんが2020年に亡くなるという、グループとしての転換期を迎えていました。
(彼の愛称は「クコ」なのですが、今回のアルバムでも「Cuco en el Arpa」という彼への追悼曲が演奏させています)

そんな中、今回のアルバム『La Recia』は、同じくグループの初期メンバーで女性ヴォーカリストのアナ・ヴェイド(Ana Veydó)がフロントに立ってアルバムを制作するスタイルに舵を切ったようです。

アナ・ヴェイドさんは創立メンバーですがシマロン以外でのソロ活動なども多く、個人的にはなんとなくゲストっぽい立ち位置なのだと思っていたので少し意外ではありましたけど。

アルバムタイトルの『La Recia』というのは女性の歌い手のことで、基本的にはアナさん目線のタイトル。どちらかというと男性中心であるホローポの世界において、女性であることの意義を主張しているようです。
インタビューでも「この世界で女性としてやっていくにはタフでなければならない」と言ったことを発言していました。

ハリウッドセレブがパブリシティの為に発言する「女性へのエンパワメント」みたいなのとは違う話だろうし、アナさんの言わんとしていることは理解できるのですが、これまでの(カルロスさんがリーダーだった頃の)シマロンからイメチェンが激しすぎて若干とまどってしまいます。

そういった話は別にして今回のアルバムの音について

まずわたしは個人的にヴェイドさんの声質があまり得意じゃない、という点は言っておかないといけないかな。
これは完全に好みの問題ではあります。「あの声こそがホローポ」という意見だっておそらくあるでしょう。

ヴェイドさんは南米の音楽を学術的に収集したりもしているようで、たとえばシングル曲である『Velorio』は、「リャノ地方の最奥地で歌われる古い曲を、アマゾンのマンガレのビートで演奏した」とのこと。

そんな感じで、今回は今までシマロンが演奏してきた典型的なホローポとは少し印象の違う曲も多いですね。

ヴェイドさんがこのアルバムリリースの前に受けたインタビューでは、この辺りの曲の成り立ちが詳しく説明されているのですが、翻訳ソフトではいまいちニュアンスがわからず、原文のスペイン語も読めず、、(誰か詳しい人が説明してほしい)

また、こういう非常にバラエティに富んだ曲構成・アルバムコンセプトが、「アルバムを楽しく聴く」という点において効果的だったかというと、個人的には「そうとは言えない」という印象です。

そういったもろもろをまとめると、今回のアルバム『La Recia』は採点が辛くなってしまうのですけど、それもこれもこれまでのシマロンのイメージが強すぎるせいかもしせませんね。

Songlinesの表紙を飾る

シマロンのメンバーは、UKのワールド系音楽雑誌「Songlines Magazine」2022年6月号の表紙を飾るそうです。
(ダライ・ラマなど世界のセレブを撮る大物写真家の)Ruven Afanadorさんがカメラマンだったとか。

Songlinesは(ワールド系では)唯一といっても良いほどのメジャー誌ですから、気合が入っていたのかも。

上半身裸の男性メンバーがトライバル風タトゥーを描いているのですが、、カホンの上でポーズ取ってるのはなにw? 後ろで倒立しているのはなにw?

アナ・ヴェイドさんのアイデアらしいのですが、斬新なアートワークですね!

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