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ヨーヨー・マが演奏する「アメリカーナ」

2011年のアルバム『Goat Rodeo Session』で結成された、チェロ奏者のヨーヨー・マ率いるチーム「ゴート・ロデオ」のメンバーが再結集し、2020年にリリースした『Not Our First Goat Rodeo』の紹介

チーム「Goat Rodeo」
Edgar Meyer (Bass, Piano)
Yo-Yo Ma (Cello)
Stuart Duncan (Fiddle, Banjo, Vocals)
Chris Thile (Mandolin, Vocals)
Aoife O’Donovan (Vocals)

このアルバムですが、ぜんぜんリリースされたことを知りませんでした。
最近Susan AlcornやMountain Manのことをブログに書いていて、その関連でアメリカーナっぽい音源をまとめて聴いていたところ、このアルバムをSpotifyがオススメしてきたみたいです。
SpotifyのAIはなかなか良いレコメンドをしてきますね!

ヨーヨー・マ、ではなくてエドガー・マイヤー

ヨーヨー・マはクラシックをほぼ知らない私でも知っているほどのクラシック界のトップ・オブ・ザ・トップスのチェロ奏者。
彼はアストル・ピアソラ、ジョビンなど南米の音楽、モリコーネ曲集など、純正クラシックの合間にポップスよりのアルバムもリリースしているんですよね。
こういうポップスよりのアルバムは基本的にアルバムのみの「企画モノ」なのだと思います。
(たぶん「そんなの良いからバッハを弾け」というまわりからの声が強いのかも)

ですがヨーヨー・マは、今回の『Not Our First Goat Rodeo』のようなブルーグラス/アメリカーナ路線のアルバムについては例外的に、かなり前からかなりの枚数のレコーディングを継続的に行っているようです。

ヨーヨー・マのアメリカーナ路線のアルバムはおそらく
Yo-Yo Ma, Edgar Meyer, Mark O’Connor 『Appalachia Waltz』 (1996)
というアルバムが最初くらい。

この時期から、ヨーヨー・マとエドガー・マイヤーの長く続くアメリカーナ路線のコラボレーションがはじまることになります。
実際のところは、このアメリカーナ路線はエドガー・マイヤーの好みという側面が強いのでしょうね。
ヨーヨー・マは、エドガー・マイヤーに依頼されて彼のプロジェクトにたびたび参加している、といった方が正確かもしれません。

このエドガー・マイヤーとヨーヨー・マが参加したアメリカーナ路線のアルバムをあげると

Mark O’Connor With Yo-Yo Ma, Wynton Marsalis, James Taylor 『Liberty! The American Revolution』(1997)
Béla Fleck, Edgar Meyer, Mike Marshall 『Uncommon Ritual』 (1997)
Joshua Bell & Edgar Meyer With Sam Bush & Mike Marshall‎ 『Short Trip Home』 (1999)

Edgar Meyer & Chris Thile 『Edgar Meyer & Chris Thile』 (2008)
Yo-Yo Ma, Stuart Duncan, Edgar Meyer, Chris Thile 『The Goat Rodeo Sessions』(2011)
Chris Thile, Edgar Meyer ‎『Bass & Mandolin』 (2014)

といった感じでけっこうな枚数がありますね。実は他にももっとあるのかも。

初期(90年代)はマイヤーとヨーヨー・マのふたりに、フィドルのマーク・オコナー、マンドリンのベラ・フレックやマイク・マーシャルといったプレイヤーが参加することが多かったようです。
現在、世界でトップ3に入るくらいにうまいヴァイオリニストであるJoshua Bellが参加しているのも聴きどころですね。
ジェイムズ・テイラーもこの時期のコラボに良く参加していて、チーム「Goat Rodeo」のレコーディングがジェイムズ・テイラーのスタジオで行われているのもそんな縁からのようです。

いったん小休止があった後の2000年代後半に、エドガー・マイヤーとクリス・シーリーの共演があり、さらにそこにヨーヨー・マも参加する流れでチーム「ゴート・ロデオ」が結成されたようです。

あらたに参加したクリス・シーリーはパンチ・ブラザーズなどで知られるアメリカーナ路線のマンドリン奏者なのですが、クラシック畑のエドガー・マイヤーのことはずっと憧れの存在で共演を望んでいたそうですね。
クリス・シーリーも2010年代から純正クラシック音楽へ挑戦しているみたいで、ソロで『バッハ ‎– Sonatas & Partitas Vol. 1』をリリースし、さらにはヨーヨー・マ、クリス・シーリー、エドガー・マイヤーの3人で 『Bach Trios』 (2017)というアルバムもリリースしています。

クリス・シーリーは他ジャンルとの共演が多いミュージシャンで、ジャズピアニストのブラッド・メルドーと共演したりしていますが、こういうジャズ路線はあまりハネなかったみたいですね。
その後シーリーはあまりジャズと接近したアルバムはレコーディングしていませんし。
個人的にもメルドーとの共演アルバムは「ぜんぜんジャズ要素ないね。メルドーが演奏する必要あるのかな」という印象です。
一般的な話として、そもそもジャズは他ジャンルとのセッションに向いていないジャンルではないかな、という気はしています。なんというか「クセが強い」

この時期のアルバムでいうと、ちょっと雰囲気は違いますがエドガー・マイヤーがベラ・フレック、ザキール・フセインと共演した『The Melody Of Rhythm』(2009)というアルバムはかなり大好きで最高なので紹介したいです。
このアルバムもエドガー・マイヤーのアメリカーナ路線から生まれたアルバムと言えるかもしれません。

『Not Our First Goat Rodeo』

そんな数多くのミュージシャンの共演の果てにレコーディングされた今回の『Not Our First Goat Rodeo』ですけど、今までのアメリカーナ路線からは少し外れた雰囲気を持ったアルバムですね。

分かりやすくいえばアイリッシュ音楽のジグやリールっぽいテイストをところどころに聴くことができます。マンドリンによるバッキングなどは、なんとなくSolasとかLunasaとかをイメージさせます。
メンバーそれぞれが移民の家系ということもあり、そのルーツをさかのぼるというコンセプトがベースにあるようで、シーリーとダンカンのルーツであるアイリッシュ/スコティッシュ音楽にフォーカスしたということのようですね。

このアルバムに収録されている曲じたいも、アイリッシュ/スコティッシュ音楽のフォークソングのような伸びやかで印象的なが多いですね。
特に冒頭の「Your Coffee is a Disaster」「Waltz Whitman」などは名曲だと思います。

追記

今回は『Not Our First Goat Rodeo』に関連するアルバムが多くて、アルバム紹介ばかりになってしまった感じです。

ヨーヨー・マといえば、ワールド系の音楽を好きな自分のような人にとっては、シルクロード・アンサンブルというプロジェクトでの印象が強い人。
Pipa(中国琵琶)のウー・マン(Wu Man)、ケマンチェのケイハン・カルホール(Kayhan Kalhor)といった「おつ!」と思わせる意外な人選のプロジェクトだったのですが、シルクロード・アンサンブルについてはまた別の機会にします。