タイショーン・ソーリー・トリオ+グレッグ・オズビー『Off-off Broadway Guide To Synergism』

ジャズの世界でトップ・オブ・ザ・トップスのドラマーであるだけでなく、近年はオペラの作曲など作曲家としても認知される存在となったタイショーン・ソーリー
今年に入ってからも、ヒューストンのロスコー・チャペルで初演された『Monochromatic Light (Afterlife)』といった舞台なども話題になっていました。

2022年は彼の長い活動の中でも最もスポットライトを浴びた年として記憶されることになるかもしれませんね。

今回、この自身がリーダーのピアノトリオに、ゲストとしてサックス奏者のグレッグ・オズビーを迎えたアルバム『Off-off Broadway Guide To Synergism』をリリースしています。
リリースは(みんな大好き)Pi Recordingから。

ニューヨークのJazz Galleryでのライブ録音で、CDだと3枚組というボリュームです。

メンバーは
Tyshawn Sorey(drums)
Aaron Diehl(piano)
Russell Hall(bass)
Greg Osby(Sax)

トリオメンバーは『Mesmerism』からベース奏者の変更があり、マット・ブリュワーから、エメット・コーエン・トリオなどで知られるジャマイカ人のラッセル・ホールになっています。

このソーリーのピアノトリオは、今年になって初めて『Mesmerism』というタイトルのアルバムをリリースしたばかり

1年も経たずにライブアルバムをリリースしており、このトリオの活動はかなり活発みたいですね。

タイショーン・ソーリーとグレッグ・オズビーは初共演だと思いますが、ジャズライターのネイト・チネンさんによると、オズビーのアルバム『Channel Three』(2005)がひとつのきっかけだったのではないか、とのこと。
『Channel Three』ではマット・ブリュワーがベースを担当しており、どちらのアルバムでもオーネット・コールマンの「Mob Job」が取り上げられていたり。
ブリュワーの人脈で今回の共演が実現したのではないか、と考察しているようです。

『Off-off Broadway Guide To Synergism』はグレッグ・オズビーが参加することで、『Mesmerism』でのトリオ演奏とは180°違う印象ですね。

『Mesmerism』はかなり緻密で繊細な演奏で、タイショーンのこれまでのアルバムと比べても違和感ないのですが、今作はかなりアグレッシブで、良くも悪くもグレッグ・オズビーのカラーが強い感じ。
クリシェではない長尺フレーズをバリバリと吹いていて、なんとなく「2000年代のジャズ」というイメージもありますね。

ソーリーとホールのリズム隊はオズビーのサックスにうまく合わせている感じですが、ディールのピアノはチェレンジというかバトルっぽい演奏ですね。
こういう「ハマらなさ」もライブアルバムならではですね。
(とはいえディールはサックスパートが終わって、トリオになった途端にのびのびと弾いている感じですが、、)

おそらくもう無いかもしれない組み合わせの貴重なライブ録音であり、やはり聴き逃せないですね。

曲リスト

Night and Day by Cole Porter
Please Stand By by Greg Osby
Chelsea Bridge by Billy Strayhorn
Three Little Words by Harry Ruby and Bert Kalmar
Mob Job by Ornette Coleman
Ask Me Now by Thelonious Monk
Out of Nowhere by Johnny Green and Edward Heyman
Ashes by Andrew Hill
Jitterbug Waltz by Fats Waller
It Could Happen to You by Jimmy Van Heusen and Johnny Burke
I Remember You by Victor Schertzinger and Johnny Mercer
We’ll Be Together Again by Carl Fischer
Contemplation by McCoy Tyner
Solar by Miles Davis