Yanka Rupkinaとブルガリアン・ポリフォニー

ワールドミュージックが世界的に注目されたのは1980年代ですが、その時代に最も商業的にもヒットし広く聴かれた音楽がブルガリアン・ポリフォニーです。

ブルガリアン・ポリフォニーとは

ブルガリアン・ポリフォニーと言うのを簡単に説明すると、ブルガリアの伝統音楽を歌う女性合唱団のこと。
1980年代後半にマルセル・セリエという音楽プロデューサーが企画したアルバム『Le Mystère Des Voix Bulgares』が大ヒットしたことで世界中に知られることになりました。
実際にはこのアルバムはいくつかのグループの演奏をコンピレーションしたもので、代表的なグループとしては

  • Bulgarian State Radio & Television Female Vocal Choir(ブルガリア国立放送合唱団)
  • フィリップ・クーテフ・ブルガリア国立合唱団(The National Folk Ensemble)
  • Trio Bulgarka

などがアルバムに参加しました。

その後、それぞれのグループが「ブルガリアン・ポリフォニー」として活動したりしているの分かりづらかったりします。
一般的にはフィリップ・クーテフ楽団がブルガリアン・ポリフォニーの代名詞的な扱いのようですけど。

例えばこのKEXPライブはブルガリア国立放送合唱団のようですね。

さらに今年2019年に来日したグループであるブルガリアン・ヴォイセス・アンジェリーテなどは、フィリップ・クーテフの合唱団の関係者などがスピンオフした次世代のグループだったりしてさらに増殖中です。

ポリフォニーを彩るソロイストたち

ナダカ・カラジョヴァ

ブルガリアン・ポリフォニーは、コーラスと言いつつも西洋音楽でいう美しいハーモニーだけでなく不協和音なども使い、さらにはソロイストによる東ヨーロッパ的なフレーズも聴きどころです。

ブルガリアン・ポリフォニーに参加したヴォーカリストで、ソロイストとして最も有名になったのはナダカ・カラジョヴァですね。
ロングトーンの高音を鳴らしきる素晴らしい声だと思います

ヤンカ・ルプキナ/ Trio Bulgarka

もう1人のソロイストとして素晴らしいレコーディングをしたのが、Yanka Rupkina(Янка Рупкина)さんです。いちばん紹介したいのは彼女です。
『Le Mystère Des Voix Bulgares』にはTrio Bulgarkaの1人として参加してソロイストも勤めました。このグループは名前の通りトリオでのコーラストリオです。

Trio Bulgarkaの名前を知っている人は、ほとんどケイト・ブッシュの『The Sensual World』『The Red Shoes』の中でフィーチャーされたことで知ったのではないでしょうか。
世界的なポップスターのアルバムということを考えると異例とも言える大きな扱われ方でしたね。
今の時代なら彼女たちに世界中からオファーが殺到したのかもしれませんけどね

弦楽器の伴奏つきのアルバムなどもあるのですが、最も彼女たちの良さが引き出されているのが『Forrest is crying』などの3人のコーラスオンリーという編成でしょう。

このアルバムは本当に素晴らしいです。間違いなく歴史に残るマスターピース。このアルバムも#私を構成する1枚に入れたいくらいでした。

3人という最小限でフットワークの軽いコーラスワークに、Yanka Rupkinaの素晴らしいソロが絡み合い、この上ない美しい音楽だと思いますね。

『Le Mystère Des Voix Bulgares』はかなりアレンジされたブルガリア民謡なのですが、Trio Bulgarkaではオリジナルのブルガリア民謡に近い曲が聴けますね。曲の展開も早くで短い曲が多いです。『Forrest is crying』はサブスクにないのでこちらのベスト盤的アルバムを紹介

Yanka Rupkinaさん あの人はいま、、

このあと90年代以降は彼女の目立ったレコーディングなどは無いのですが、YouTubeを見ると割とたくさん動画は出てきて、いろんなコンサートなどで歌っていますね。割とお客さんもたくさん来てスターっぽい扱いな気もします。
(日本で言うと石川さゆりとかそういう芸能人的な知名度があるのかも)

面白いところでは、Ivo Papasovとの共演動画というのもありました。(ふたりのビッグショーみたいなの??)

彼女は本国ブルガリア以外では完全に「過去の人」となっていましたが、2005年に『Keranka』というアルバムをリリースしています。
ほとんどの曲をRobert Jelmerという人が書いている、2000年代のブルガリア民謡風ポップアルバムという感じです。
Rupkinaさんの歌声は相変わらず素晴らしいのですが、それ以外に聴きどころの少ないアルバムと言えるかも。

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