このアルバムはうれしい!
正直ぜんぜんノーチェックだったのですが、2019年の11月に待望のアルバムがリリースされていました。
ピアノ藤井郷子さん・ドラム吉田達也さんによるデュオ「藤吉」のニューアルバム『梅花藻』です。
2人のデュオによるアルバムは『藤吉』(2002)、『Erans』(2004)の2枚がリリースされていて、この『梅花藻』は15年ぶりのアルバムということのよう。
このデュオは、2000年代に定期的に活動していた藤井郷子カルテットのスピンオフプロジェクトのような位置付けでした。
その藤井郷子カルテットも2007年の『BACCHUS』を最後に活動を終えたこともあり、この2人の組み合わせはもう聴けないものとあきらめていたところなので、このアルバムはうれしいサプライズですね。
作曲⇄インプロ
この『梅花藻』というアルバムは、秩序だった曲の並びになっていて、藤井さんの曲と吉田さんが書いた曲を交互に並べ、その間に2人のフリーインプロを挟むというアルバム構成になっています。
つまり吉田さん曲→インプロ→藤井さん曲→インプロ→また吉田さん曲→、、という感じ。
1曲ごとに明確に「作曲メインの曲」と「フリーインプロ曲」に分けることで、通して聴く際にメリハリをつけていますね。
こういうアルバム全体の構成というかコンセプトは旧2作『藤吉』『Erans』ではわりとあいまいだったように思います。
旧2作は聴いていて、どこまでが作曲パートでどこまでがインプロなのかパッと聴いた感じではわからない演奏が多かったですし。特に『Erans』はインプロのウェイトは少なめ。
この2人のデュオの曲も、短いモチーフが反復していくような、通常のコンポジションとは少し違った印象的な曲が多いです。
例えば2曲目「Rolling Down」のような曲では、きっちり構成された中に力強く攻撃的な面とリリカルさが同居し、もう聴いていて否応なく興奮します。この曲は少し藤井郷子カルテットを思わせる曲ですね。
それに対してインプロ曲では、制約を解かれた2人がここぞとばかりに叩きまくり弾きまくる曲もあれば、逆に静謐でミニマルな曲もあり、このアルバムの大きな魅力ですね。
ウェイトでいうと『梅花藻』は(旧2作と比べて)フリーインプロが多くなっていますね。
一部ライブ録音も含まれているみたいですけど、期間限定なので(フリーインプロも含めて)その間のマテリアルを全て記録したいという気持ちのあらわれなのかも。
いやホント、ここまでタイトなインタープレイの応酬は他の誰にもマネできないなとシンプルに思います。
年末に2019年のベスト10を選んだのですけど、これを選ぶ時には『梅花藻』がリリースされていることは知らなかったのですよね。もし知っていたらベスト10に入れたかも。
それにしても、このアルバムを年間ベストに選んだ人はほとんどいませんでしたね。唯一、海外の(フリージャズをメインで紹介する)サイトで1人だけ選んでいた人がいました(ここ)
いや、もうこれは藤井郷子カルテットの再結成、レコーディングも期待しちゃいますよね。再結成してライブしてくれたら、たとえ東京であっても観に行きたいかも。