ブランフォード・マルサリス Speaks
わたしは比較的最近の2019年になってSNSを初めて、海外のミュージシャンもフォローするようになったのですが、SNSでいちばん発言を目にするようになったミュージシャンがブランフォード・マルサリスです。
彼は父親でもあり大学の先生でもあるので、あまりおちゃらけた投稿はしないのですが、時事問題・政治問題などについてのコメントもリアルで興味深いです。
ポリティカルな面では穏健派なのだと思いますけど。
彼のSNSと言えば、アメフトの話題も多いです。
現在(2019年12月)はアメフトがシーズンなのですが、ブランフォードはもちろん地元ニューオリンズ・セインツを応援していますよ。
「アメフト以外にファンと言えるものは無いよ」とも言っているし、子供の頃は試合をタダで観るためにスタジアムで試合のプログラムを売って働いていたこともあったようです。
セインツは今年はかなり強くて、スーパーボウルにもいけそうな勢いはあります(追記:セインツは2020年はプレイオフで敗退)
ブランフォードもノミネートされているグラミー賞の発表は2020/1/27なのですが、これはスーパーボウルの開催日2020/2/2の前週にあたります。もしセインツのスーパーボウル出場が決まったらもうグラミー賞どころじゃないんじゃないかなと思います。
(追記:ブランフォードはグラミー賞受賞ならず。受賞はブラッド・メルドーでした)
『The Secret Between The Shadow And The Soul』
Eric Revis (bass)
Justin Faulkner (drums)
Joey Calderazzo (piano)
Branford Marsalis (sax)
今年のグラミー賞にノミネートされていたアルバムがこちら。
ノミネートが発表された時は、「ブランフォードかクリスチャン・マクブライドに獲ってほしい」と書いたのですが、その後の雑誌などの評価を読むと、ブランフォードが最有力かな(再追記:受賞はブラッド・メルドー)
それにしてもこのカルテットのメンバーは、かなり長く期間同じメンバーで共演しているんですね。
カルデラッツォとレビスは20年、フォークナーも10年一緒に演奏しています。
これだけ同じメンバーで長く続いているグループってなかなか無いかも(キース・ジャレットのスタンダーズとかくらい?)
このアルバムでもレビスとカルデラッツォそれぞれ2曲づつ曲を書くなど、ブランフォードがリーダーで全面的に主導権を握っている訳ではなく、各メンバーがかなり対等な関係なのかも。
プレイにおいても、それぞれのメンバーのソロ・スペースも多いです。
It Sounds Happy
1曲目の”Dance of the Evil Toys”こそアップテンポでフリーフォームな演奏ですけど、アルバム全体の印象は美しいメロディーとノリの良い曲が多いかも。
ブランフォードは、ヴォーカルのカート・エリングとアルバムをリリースしたり、最近ではわりとメロディアスで聴きやすい印象のアルバムも多いかも。
このアルバムのポジティブな雰囲気は、ブランフォードと娘さんのエピソードが象徴的ですね。
娘が10歳で部屋で絵を描いていた時、たまたまセロニアス・モンクの曲がかかっていたんだ。
それを聴いて娘は 「この曲大好き!」と言ったんだ。
わたしが「どうして?」と訊くと、娘は「すごくハッピーな曲だから(Because it sounds happy)」と答えたんだよ
このアルバムの “Snake Hip Walts” って曲もハッピー・ソングだろ?
とのこと
「新しい」ことには興味がない
ただ、こういうワンホーン・カルテットでパッと聴いて目立った特徴のないアルバムは、どうなんでしょう、賛否が分かれるアルバムなのかも。特に「新しく」はないですからね。
そもそもブランフォード自身は、あまり「革新的なジャズのスタイル」みたいなことには興味はないみたいですしね。
インタビューで「ジャズの新しいスタイル」について訊かれた時も、
「新しく革新的なことに興味はないよ」
「” 今まで聴いたことのない新しい音楽 ” がゴールなら、ジャズのレッスンなんて必要ないだろ?」
「伝統とのつながりを経ってしまった音楽が ” 新しい”と言われるんだよ」
といまの風潮をチクリと批判したりも。
現在はニューヨークを離れ、ノース・カロライナ中央大学で教鞭をとるブランフォードですけど、やっぱり先生らしく彼の音楽についての話はいつも示唆に富んでいるなと思いますね。