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そして窮地に立たされるスーパーソニック2021

今年は野外音楽フェスに関してはあまり楽しくない話題でもちきりでしたね。

新型コロナの感染が急拡大する中で開催され、SNSを中心に多くの批判を浴び「失敗」したフジロック。

マスク無し・観客もみくちゃ・飲酒ありと言った感染対策を完全無視して世間から大バッシングをくらった愛知のヒップホップイベント「NAMIMONOGATARI」(以下、波物語)

野外音楽フェスがニュースになり世間からの逆風にさらされる中、9月18日、19日に千葉ZOZOマリンスタジアムで開催予定の「スーパーソニック」についても、千葉市が延期もしくは規模の縮減を要請したことがニュースになっていました。多くの人が「ついにスパソニもか」と思ったんじゃないかな。

千葉市長の会見では

「要望を受け入れてもらえない場合は市からの後援を取り消しする」

とけっこう強めの踏み込んだ発言もありました。

ZOZOタウンスタジアムは千葉市の所有でもあり「ゴネるなら来年から施設の貸し出しはしないよ」くらいの、プチ恫喝とも取れるような会見でしたね。

市長だけでなく千葉県知事も会見していましたが、「以前から医療が逼迫している状況では開催は難しいと以前から考えていた」と、こちらもまるでフェス主催者がコロナ禍での開催をゴリ押ししているような印象を与える話ぶりでした。もう野外フェスは完全に悪者扱いって感じ。

スーパーソニック運営側はというと、新聞の取材にはこの千葉市の要請を受けて、

「要請に最大限協力し開催に向け準備を進めるが、全てを受け入れるのは難しい」

と回答しているようです。

出演者のスケジュールもあるので延期は不可能だし、観客数の縮減するためには1度チケットを払い戻し・再販売する必要があるため時間的に難しい、というのが理由のようです。

ただ、今のところ新聞の質問に答えただけで、千葉市の要望に対してオフィシャルにはコメントせずスルーしているところを見ると、まだ協議中なのかもしれないですね。
もしくは、どの程度キャンセルが出るかを見極めようとしているとか(強行開催したのにキャンセル続出となると、評判も落ちるわ赤字になるわでもう目も当てられないので)
もしくは、波物語の件で世間がヒートアップしているのでほとぼりが冷めるのを待っているとか(今は何を言っても叩かれるとは思いますので)

運営のクリエイティブマン社長の清水さんは、今年前半に「洋楽プロモーターはコロナ禍の補償がない」という訴えを雑誌や新聞に書かせたりしていて「モノ言う経営者」という感じでしたが、こういう都合の悪い時にダンマリなのはどーなのよ?と思ったりもしますね。

5000人の壁

もうひとつ千葉市の会見で気になったのは、観客数の縮減数については「5000人まで」を強調していた点。
波物語の時もそうでしたが聞いてて「あれ?」と思ったんですよね。

屋外イベントに関しては 緊急事態宣言が出ている場合は「5000人以下」、宣言が出ていない場合は「十分な間隔が取れること」というガイドラインにしている自治体がほとんどです。

もし緊急事態宣言が発令されたら5000人以上のチケットは販売できないのですが、これには抜け道があって、宣言発令前に売れたチケットに関しては適用外となります。

つまりスーパーソニック の場合でいうと、千葉県が緊急事態宣言が発令した8月2日より以前に売れたチケット13,000枚分に関してはキャンセルや払い戻しは必要なく、そのまま動員しても良いことなります。

ちなみに、同じZOZOマリンスタジアムを使用している千葉ロッテマリーンズでも緊急事態宣言発令後の観客は8千人くらい。
プロ野球もリーグ全体として「5000人以下」というガイドラインを設けているのですが、同じように「緊急事態宣言前に売り出されたチケットは適用外」という抜け道を利用にして、5000人以上の観客を入れてしまっているようです。

というわけで、スパソニ側が千葉市の要望に対して「すでにチケットは販売済みなのでいまさら人数は減らせません」と拒否することは「ガイドライン上は」問題ないことになりますね。

うやむやになるガイドライン

ただガイドラインはあくまでガイドラインで、状況によって厳しくもゆるくもなるということかもしれませんが、ここ最近のフェスに関してはおかしな運用をしているように思います。

波物語では、8000枚程度のチケットが事前に売れていたそうです。ガイドライン上は波物語もチケットを持っている8000人全員を入れて良かったはずです。

ですが、観客数について愛知県知事の大村さんは「開催のずっと前から5000人以下にするように要請していた」と言ってました。
これはこれでおかしな話で、緊急事態宣言が出ていないタイミングでなにを根拠に「5000人以下にしろ」という要請を出せたんだろう?そんな意味不明の要請は運営側に拒否されてもしかたないと思いますよ。

それに愛知県に緊急事態宣言が発令されて5000人以下のガイドラインが有効になったのは、波物語イベントが開催される8月29日のたった4日前のことです。4日前になにを言われても直前すぎてなにも対応できないですし。

波物語のコロナ感染対策は論外でしたし事前協議の内容についてもウソもついていたようですけど、こと観客数(と酒類販売)に関しては愛知県側の言っていることもメチャクチャだったと思いますよ。

もっと言えば、5000人の制限も酒類販売禁止もあくまで要請レベル。法律でもなんでもないのだし。
大村知事が「要請なんだから守って当然」みたいな言い方をしていたのはちょっと意味不明でした。

千葉市に関しても、「チケット販売済みの観客数」を減らせと言っている時点でメチャクチャなのは同じです。

スパソニの事情

ただ、スーパーソニックと波物語では事情が違うな、という点もあります。

千葉県の緊急事態宣言の発令は8月2日で、イベント本番の9月18・19日までにけっこう時間はあったのですよね。
8月2日の段階で「観客を縮減してほしい」と要望を受けていたのだったら、手間だし費用もかかりますが、いったんチケットをキャンセルにして再販売するだけの時間はあったんじゃないかとは思います。

そもそも、スーパーソニックがチケットの一般販売をはじめた7月24日にはすでに関東圏では急激に新型コロナ感染者が増えていて、緊急事態宣言が発令されそうなことくらいは予想できたはず。
でもスーパーソニックはチケット販売を見合わせるでもなく、緊急事態宣言が発令されてチケットが売れなくなる前に予定分のチケットをすべて売りさばいた訳です。

このあたりの対応が千葉市側からすると「あ、そういうことするのね。ぜんぜん協力的じゃないんだ」と悪印象を持たれてしまったのかもしれません。
だとすると千葉市長があれだけキツめにスパソニに注文をつけるのもわからないでもないです。

スパソニを待ち望んでいるファンにとっては、「野球だって開催しているだろ」「どうして音楽フェスだけ目の敵?」と理不尽な思いを持つのは理解できますが、野外フェスへの逆風が大きくなりすぎて建前やロジックはかき消されてしまっている状況なので、さすがにスーパーソニックは今年は開催は難しいんじゃないかなーとは思います。

追記

スパソニは、直前のヘッドライナーアーティスト(Kygo)の出演キャンセルなどもあり、台風直撃という憂き目にもあいましたが、けっきょくは開催されたようです。

主催者によりますと、観客は18日が6199人、19日が7152人で当初2日間で2万人と見込んでいた観客数を下回りました。

とあるように、販売されたチケット数のうち3〜4割はキャンセルとなったようです。

2019年は、2会場で3日間のべ30万人を動員したということで、かなり規模縮小したことは間違い無いですね。

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