スティーブ・リーマン『The People I Love』レビュー

2019年ももう1ヶ月
12月はもうホリデーシーズンなので、もう新譜などの話題も無くなってきますので、もう今の時点で2019年のベスト10をぜんぶ選んでも大丈夫な時期になったのかなと思っています。

今回は2019年ベスト10の9枚目はスティーブ・リーマン(Steve Lehman)のアルバム。

スティーブ・リーマン『The People I love』

The People I Love (CD, Album) アルバムカバー

Steve Lehman(Alto Saxophone)
Craig Taborn(piano)
Matt Brewer(bass)
Damion Reid(drums)

このアルバムはSteve Lehman Trio + Craig Tabornというクレジットなのですね。

リーマンはピアノレスのトリオで演奏することが多く、このアルバムではピアノにクレイグ・テイボーンが参加しています。この組み合わせはこのアルバムのみの企画のようです。

最初の動画は、『The People I love』に収録されている曲をTaborn抜きのレギュラートリオで演奏しています。

インド音楽好きのわたしにとってはヴィジェイ・アイヤーやルドレシュ・マハンサッパは気になるミュージシャンで2人のコラボについて投稿したりもしたのですが(こちら)、ふたりの活動をみるとスティーブ・リーマンが重要なコラボレーターなのだとわかります。

スティーブ・リーマンはweb記事などを読むと、なんとなく「理論的」とか「硬派」みたいなイメージで語られることが多いみたいですね。
バークリーメソッドみたいな音楽理論も良くわからないのですが、リーマンも(たとえばM-Baseみたいな)さらに複雑で高度なよくわからない理論をもとに演奏しているのかな?

フリーとかアヴァンギャルドなテイストの音楽は個人的にはスリリングで好きなのですけど、フリージャズ側に針を振り切ったアルバムは、さすがに聴き通すのは辛いかも。
たとえばアルバート・アイラーとかデレク・ベイリーとかのアルバムは、おそらく今後も楽しんで聴けるようにはならないはず。

それに対してリーマンのアルバムは、その「アヴァンギャルド」っぷりを聴いても理解できなくなる一歩手前のギリギリOKのラインで踏みとどまっていて「ちょうど良い」感じです。

Autechreカヴァー

このアルバムではKurt Rosenwinkel、Jeff “Tain” Watts、Kenny Kirklandの曲を取り上げるなど、他の人があまりやらないセレクションも目をひくのですが、その最たるものがAutechreのカヴァー。以外にすんなりアヴァンギャルドジャズとして成り立っています。

ビジェイ・アイヤーはマイケル・ジャクソンの「Human Nature」をカバーしたりしてますし、ジャズミュージシャンのレディオヘッドカヴァーなんかは良く聴きますけど、Autechreのカヴァーってのは他にないんじゃないかな。

このアルバムでは端正で流れるようなアルトもさすがなのですが、
ドラムのダミアン・リードのカッコ良さはすごく耳に残りますね。彼は一般的にはロバート・グラスパーとの共演で有名なのでしょうけど。

彼のドラムは前のめりにつっかかっていくようなプレイで、ドラムの音もマスタリングで大胆に加工されています。
あまりまわりの音に合わせて叩いている感じはしないのですけど、リーマンのスピーディーでパキパキした曲にはフィットしてるなと思います。

Rudresh Mahanthappa & Steve Lehman 『 Dual Identity』

Rudresh Mahanthappa(Alto Saxophone)
Steve Lehman (Alto Saxophone)
Liberty Ellman(guitar)
Matt Brewer(bass)
Damion Reid(drums)

過去のレーマンの代表作を紹介。

『 Dual Identity』はマハンサッパ評価を一気に高めた(らしい)アルバムだったようですけど、リーマン・トリオにマハンサッパが客演する形のレコーディングになっています。

リーマンは、ヴィジェイ・アイヤーのアルバム『Far From Home』に参加していて彼とも共演経験もありますね。
リーマンもアイヤーもドラムのTyshawn Soreyと共演が多かったり、このあたりのミュージシャンはなんとなく一派を形成している印象ですね。