Spike Orchestra『Binah』 /「The Book Beri’ah」を全部聴くVol.3

Masada 唯一のビッグバンド

Spike Orchestraは、ユダヤ系イギリス人である作曲家サム・イーストモンド率いる実験的なビッグバンドです。

John ZornのMasadaプロジェクトでは唯一のビッグ・バンド編成のグループであり、イギリス出身のグループですね。
彼らはMasada Song Book 2 Vol.26に続いて第3期にもふたたび登場です。

このSpike Orchestaraは、もともとはJohn ZornのRadical Jewish Cultureなどに触発されてグループをはじめたようです。
複雑なオーケストレーションと自由奔放な即興演奏を組み合わせた作風で、ジャズ、ロック、ラディカルなユダヤカルチャー、サーフ、カートゥーン、メタル、クラシック、フリーインプロビゼーションなどからインスピレーションを得ており、まさにJohn Zornの音楽をビッグバンドで演奏するグループという表現がピッタリです。

イーストモンドと作曲家ニッキー・フランクリンが共同で作曲した2014年のアルバム『Ghetto』で爆発的な人気を博しました。
このアルバムは、ワルシャワのゲットー蜂起にインスパイアされており、22人の音楽家による3つのアンサンブルが織り成す10の楽章からなる長編の物語的作品です。Zornの『クリスタル・ナハト』を思い起こさせます。

Song Book 2の時にリハーサルの様子が公式YouTubeにて公開されていますが、ここで指揮をしているのがSam Eastmondですね。

彼らの魅力はオーケストラによる分厚いアンサンブルと、主にトランペットによってハデに鳴らされるユダヤメロディですかね。
下世話な感じが、マリア・シュナイダーみたいないわゆるジャズビッグバンドとは一線を画していて、むしろラロ・シフリンの映画音楽テーマみたいに聴こえることすらありますね。

ビッグバンド演奏なので当然アンサンブル重視の演奏になり、インプロ的な楽しさはあまりないのかもしれませんけど、やっぱりこれは革新的だと思いますし聴くべきグループなんじゃないかと思いますね。
(日本のジャズファンはあまりビッグバンドを聴かない人は多そうですけど)

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