ソフィア・レイ(Sofia Rei)『Umbral』レビュー

アルゼンチン出身で現在はニューヨークをベースに活動するヴォーカリスト、ソフィア・レイ(Sofia Rei)の5枚目のアルバム『Umbral』

web記事などを読んでいると彼女のことを「グラミー賞ノミネートアーティスト」って紹介も多いのですよね。あんまりそんな風に思っていなかったのですが。
どうもこれは2009年にジェフリー・キーザーのアルバム『Áurea』がグラミー賞のベスト・ラテン・ジャズ・アルバムにノミネートされたことを指しているようです。これってレイはゲスト出演だしちょっと無理があるような気はしますが、、

この新作アルバム『Umbral』は、チリ出身で1945年にラテン・アメリカに初のノーベル文学賞をもたらした詩人ガブリエラ・ミストラルへのオマージュとして書かれた曲が収録されています。

レイは、録音機材をバックパックに詰めてひとりでガブリエラ・ミストラルの生誕地であるチリのエルキ渓谷を旅したそうです。その旅の途中で地元のミュージシャンと出会い、彼らからその地方の民族音楽を収集したのだとか。
このアルバムの収録時間が約27分とEPくらいのボリュームなのも、この旅の限られた経験とマテリアルから曲が書かれたからのようです。

『Umbral』はこういった経緯で作られており、普段と違う言ってみれば企画盤のような立ち位置のアルバムのためか、アルバムの雰囲気もこれまでのレイのアルバムと比べると随分違っていてますね。
これまでは、基本的には生演奏をベースにしかも自らチャランゴを演奏するなどデュオなどの小編成でミニマルな演奏が多かった印象ですが、このアルバムではフォークトロニカとも言えるような、大胆なポストプロダクションが施されています。

このあたりの音作りのセンスは、プロデューサーでマルチインスト奏者のJC マヤール(JC Maillard)によるところが大きいようですね。本作ではプログラミングなどバックトラックは彼が作っているようです。

彼はアンジェリーク・キジョーのレコーディングやツアーに参加した事で注目されたミュージシャンで、近年のレイの最も重要なコラボレーターとなっています。
ジョン・ゾーンのマサダ第三期でも、レイとマヤールのデュオでアルバムをレコーディングしていましたね。

他には、あまり目立たないですが、同じくレイの長期にわたるコラボレーターであるベーシストのホルヘ・ローダーも3曲で参加していますね。

 

正直ラテン音楽には詳しくないのですが、この『Umbral』のようなアルバムが自分の好みに近いんだろうな、と思いますね。

このブログを書いているタイミングでマリーザ・モンチのアルバム(『Portas』)がリリースされていますが、嫌いな訳じゃないですが聴きたいのはああいうタイプの音楽じゃないのですよね。

もうちょっとアフロ・ダンスっぽいリズムの、洗練されてはいなくてもエモーショナルで、聴いててハッピーに慣れる曲が好きなんです。

『Umbral』Personnel

Sofía Rei- Lead vocals, background vocals, vocal loops, charango (7)
JC Maillard- Programming, electric guitar (2, 3, 6, 7), etc.
Jorge Glem- Cuatro (2, 7)
Leo Genovese – Synths and piano (1, 4)
Jorge Roeder – Upright bass (4, 5, 6)
Franco Pinna- Drums and percussion (2, 7)
Tupac Mantilla- Drums, percussion and body percussion (6)
Martin Bejarano- Colombian gaita (1, 3)