カヌーン奏者ソフィア・ラブロポウロウ『SISYPHUS』レビュー

ギリシャ出身、現在はアテネとオーストリアのウィーンを行き来しながら活動するカヌーン奏者(アラブ音楽で使われるツィター)ソフィア・ラブロポウロウ(Sofia Labropoulou)による1stソロアルバム『SISYPHUS』の紹介

このアルバムはTransGlobal World Music Chartを紹介しているラティーナweb版で紹介されていましたね。

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彼女は10歳からカヌーンを演奏しはじめ、2003年からの3年間にイスタンブールに移住しAhmet Meterといったカヌーン奏者の巨匠のもとでトレーニングを積んだそうです。彼女はギリシャ出身ですが、演奏する音楽は基本的にはトルコ伝統音楽がベースにあると考えて良いのかも。

トルコからギリシャに帰国後もピアノやクラシック音楽、パーカッションを学ぶなど、古典にとらわれない活動を続けているようです。映画やドキュメンタリーのために作曲をしたりもしているようです。
今回の『SISYPHUS』もカヌーン、ウード、ネイといったトルコ楽器に加えて、ヴォーカル、チェロ、ヴァイオリン、クラリネットといった西洋楽器とのアンサンブルで自然に西洋楽器と共演していますね。
良くある「民族音楽とクラシックの融合」みたいな異質な感じではないですし、特に彼女のカヌーン演奏はトルコ音楽の良さがしっかり残っていると思います。

たとえば彼がトレーニングを受けたAhmet Meterの演奏などはもっとトルコ古典に近いのだと思いますけど、けっこう押しが強い演奏で歌謡曲っぽく聴こえることもありますね。
「マカームの性格をあますところなく表現するのが良い演奏」という感覚で、古典の演奏ではテクニカルな点が重視されているのかなぁという気はします。
あまり「聴いてて癒される」とかそういった感覚的な話は古典音楽ではお呼びでないのかも。

ちなみに、1曲目は映画「イングリッシュ・ペイシェント」のサントラでも起用されたMarta Sebestyen (マールタ・シェベスチェーン)がヴォーカル。懐かしいです。
西洋音階から外れたスケールを巧みにコントロールする彼女の歌はいまでも印象的なのですが、そのぶん他の曲からは浮いた印象。まあシングルカット曲という感じなのですかね。

追記

アルバムタイトルの『SISYPHUS』はギリシャ神話のシーシュポスのことで、フランスのノーベル賞作家アルベール・カミュの『シーシュポスの神話』からつけたそうです。
神話の中でのエピソードとは、ゼウスの怒りにふれたシーシュポスが、死後に地獄に落とされて大石を山頂まで押し上げる罰を受けたが、大石はあと一息のところで必ず転げ落ちた、という話。

アルバムジャケットのガスマスク姿もトルコ古典音楽としてはかなり異質でヘビメタグループのアルバムみたいですが、何か深い意味があるのかも。

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