ジャズ・ファンクの逆襲 『スケアリー・ゴールディングス IV』

今回は、スケアリー・ゴールディングス(Scary Goldings)の新作アルバム『Scary Goldings IV』について

うーん、それにしても大晦日12月31日にアルバムをリリースするってどうかしてる。アルバムを売る気あるのかな、、

スケアリー・ゴールディングスというのは、ロサンゼルスを中心に活動するスケアリー・ポケッツに、ジャズピアニスト/キーボーディストのラリー・ゴールディングスが参加してできた、スピンオフグループです。

で、そのスケアリー・ポケッツというグループは、ビートルズやクイーン、ジャスティン・ビーバーといった新旧のアーティストをファンク・カヴァーしてYouTubeにアップするというコンセプトで活動しているグループ。

元パンプルムースのジャック・コンテと、彼の友人であるギタリスト/シンガー・ソングライターのライアン・ラーマンの2人が中心メンバーです。
この2人に加えて曲によってゲストヴォーカリストとセッションミュージシャンが加わるというスタイルです。

これまでにスケアリー・ポケッツに参加したメンバーというと、ロベン・フォード(ギター)、サム・ウィルクス(ベース)、ティム・ルフェーブル(ベース)、ルイス・コール(ドラム)といった有名どころの名前も。

ラリー・ゴールディングスも、彼らのセッションによく呼ばれていたうちの1人でした。

スケアリー・ポケッツは基本的に70年代くらいの古き良きポップスをカヴァーしているのですが、正直なところ「だったら別にオリジナルを聴けば良いんじゃ?」と思わなくも無いのですけどね。

ただ、こういうタイプの音楽を求めているリスナーはおそらく自分が想像するよりもずっと多いということなんでしょう。
そういうリスナー層はおそらくSharon Jones and the Dap-Kingsとか、Lake Street Diveとかを聴いているんじゃないかな。

Scary meets Goldings

スケアリー・ゴールディングスというグループは、単にスケアリー・ポケッツにラリー・ゴールディングスが参加しました、という意味じゃなくて、「オリジナル曲」を演奏する「ジャズ・ファンク」グループという形で差別化されているようです。

『Scary Goldings IV』メンバー
Bass – Mononeon
Drums – Lemar Carter,Tamir Barzilay
Electric Piano – Jack Conte
Guitar – Ryan Lerman
Organ – Larry Goldings
Guitar – John Scofield

ジョン・スコフィールドがこのメンバーに加わっているのは珍しいですが、元はスコフィールド・グループのメンバーであるゴールディングスが頼んで来てもらったのでしょう。

モノネオンというベーシストは初めて聞いたのですが、本名Dywane Thomas Jr.というそうで、ブーツィー・コリンズみたいな原色のド派手な服で70年代ファンクを演奏する人です。(彼のSNSのおもしろ動画も含めて)注目のベーシストかも。

演奏もキレのあるジャズ・ファンクで、最高だと思いますね。
友人とドライブする時にインストのBGMを流すならこういうのだったら完璧じゃないかな。

でもこういうグループってかなりレアだなとも思うんですよね。
ジャズの世界にはオルガンジャズというカテゴリもありますけど、あれって基本はソウルだから。
スケアリー・ゴールディングスみたいな能天気なファンクとはだいぶ印象が違う感じですよね。ドライブのBGMにはならないし。

かつてはこういうタイプのジャズ・ファンクを演奏するグループは、メデスキ・マーティン&ウッド、チャーリー・ハンター、T . J. Kirkとか、いくつかいたのですけどね。
スケアリー・ゴールディングスはこういうグループの延長線上にあるグループと言えるかも。

そう言われるとなんとなく「ジャム・バンド」っぽいのかもしれませんけど、当時ジャム・バンドと言われた多くのグループが醸し出していた「フェイクっぽさ」は、スケアリー・ゴールディングスには全然無いですね。

『Scary Goldings IV』はストリーミング配信もしていますが、ここでは動画を共有