リズワン・ムアッザム・カッワーリ・グループ(Rizwan-Muazzam Qawwali Group)は、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンの甥であるリズワンとムアッザム率いるパキスタンのカッワーリ・グループです。
今回は彼らのリアルワールドからリリースされた新作『At the Feet of the Beloved』の紹介
1997年に叔父であるヌスラットが亡くなった後に、リアルワールドレーベルはヌスラットの遺産を引き継ぐかように、Rizwan-Muazzam Qawwali Groupのアルバムをリリースしていました
2001年までに3枚のアルバムをリリースしそこでいったんリアルワールドでの活動は途絶えたのですが、今回は数十年ぶりの新作リリースになります。
グループのメンバーは
Rizwan Ali Khan, Muazzam Ali Khan, Rahat Ali (harmonium and vocals); Mushtaq Ahmad (harmonium and vocals); Zafar Ali (tabla); Ghulam Abbas (vocals); Tariq and Asif (chorus); Anwer Ali and Bashir (chorus).
伝統的なカッワールはハーモニウムを弾きながら歌うと思いますが、リズワンとムアッザムの二人はヴォーカルに専念しており、このあたりは叔父のヌスラットスタイルですね。
Rizwan-Muazzam Qawwaliの名前はもちろん知っていたのですが、これまでに好んで聴いたアルバムは正直なところ無かったかも
どうしてもヌスラットのヴォーカルと比べてしまうという面もあったかもしれませんが、ジャー・ウォブルとコラボしたり、(オーバープロダクションという)リアルワールドのいちばん悪い面が出てしまった感もあります
また彼らは現在でもまだ40代ということで、2000年あたりはまだ20代そこそこ。当時はシンプルに技量が足りていなかったのかもしれません
それもこれも「ヌスラットの後継者」として売り出したかったリアルワールドのマーケティングのせいだと思います
そういうオファーをミュージシャンがついつい受けてしまうところもワールドミュージックでは「あるある」なのかもしれませんが
しかし今作はこの数十年の稽古の積み重ねもあり、グループの一体感も増し、非常に良いアルバムになっていると思います
リードヴォーカルもインパクトはないかもしれませんが枯れた感じが良い雰囲気で、コーラス含めたアンサンブルはテンションが高いですね
本人たちも言っているように、「自分たちはヌスラットの伝統を受け継いでいく」という気概が感じられます
その一方で、カッワーリの曲というとヌスラットのレパートリーというイメージが付いている中、ヌスラットが歌ったことのないナンバーを取り上げるなど、新しい試みにもトライしているようです。
まあヌスラットの後継者というと、本来は甥であるラーハットになると思うのですけどね
ラーハットすでに(本人の希望かはともかく)ポップソングやプレイバックシンガーとして認知され国民的歌手となってしまっているので、ああいう活動を続けていくのでしょう
カッワーリの伝統という話題でいうと、ヌスラットの発掘音源アルバム『Chain of Light』がこれまでのカッワーリの姿だとしたら、『At the Feet of the Beloved』はこれからのカッワーリの姿かもしれません
でもそういうアルバムレビューっぽい意味付けは抜きにして『At the Feet of the Beloved』は良作だと思いますよ
山のようなワケのわからない音源が存在するカッワーリでは、良作というだけで貴重でしょ