ついに来た! New Masada Quartet

ここまでリリースを待ち望んだアルバムというのは年に数枚もないな、というくらい待望だったジョン・ゾーンの新グループNew Masada Quartetのアルバム。
アルバム名も『New Masada Quartet』というセルフタイトルアルバムのようです。

New Masada Quartet
 John Zorn (sax)
 Julian Lage (guitar)
 Jorge Roeder (bass)
 Kenny Wollesen (drums)

New Masada Quartetではデイブ・ダグラスと組んだ2管フロントというかつてのスタイルを捨て、ジュリアン・ラージのギターを含むカルテットという編成。
ホルヘ・ローダーとケニー・ウォルセンのリズムセクションも含めたメンバー構成は、Tzadikレーベルゆかりで集められる最も豪華なメンバーと言ってよいかも

初めてNew Masada Quartetの存在を知ったのは、おそらく2019年くらいだったかな。
この時期にヴィレッジ・バンガードなど、いろんな場所頻繁にライブを行っていました(そのしばらく後にパンデミックによってライブじたいが完全にストップしてしまうのですが)

今回のアルバムリリースが発表されたのはそれから2年後の2021年の9月で、「ついに来た!」という感じです。
リリースがTzadikのホームページで公表された時は、SNSで「めっちゃ楽しみ」「2021年最大の注目作」と興奮気味に語っていたのをおぼえています。

What is New ? What is Masada ?

そんな訳でかなり待たされた中で今回やっと新作を聴けたのですが、すごく期待していたこともあってこういう風に書くのはすごく気がひけるのですが、最初聴いた印象は「うーん、、、なんか違う」でした。

実は2019年時のライブがYouTubeでいくつかアップされていてその音源を先に聴いていたのですが、その時も「うーん、こんなものかな、、」「でもまあオーディエンス録音だしな、、」と思ってはいたのですが。

そもそもオリジナル・マサダは、
「ユダヤ旋法で書かれた曲」
「オーネット・コールマン・カルテットのスタイル」
というコンセプトがありました。

ここでいうオーネット・カルテットのスタイルというのは、トランペットとサックス奏者が、まるでひとりのプレイヤーがふたつの管楽器を同時に吹いているように(=「まるで双子のように」とも言われる)、ふたつの楽器の音色を緊密に絡ませながら演奏するというもの。

ですが、今回のカルテットはホーン奏者じゃなくてジュリアン・ラージのギターを採用したことから、その「オーネット・コールマン・カルテットのスタイル」の部分をすっぱりそぎ落としてしまったような印象です。
そういったスタイルは、現在のジャズ・インプロの基準からするとわりと「普通」とも言えるので不採用になったのかもしれませんが。

という訳で、New Masada Quartetはどちらかというとアンサンブル重視のオリジナルマサダとは違い、演奏者個人のひらめきとテクニックで曲を聴かせるタイプのグループになっていますね。

言ってみればそれは普通の現代ジャズと言えるかも。
ただこれって、これまでのマサダとは違うという意味で「New」かもしれませんが、「Masada」じゃないぞ!とは思いますよね。

そういったコンセプト的な話は別として演奏の話をすると、ゾーン自身は(相変わらず)サックス奏者としての自己評価があまり高くないみたいなので、聴かせどころのソロパートはジュリアン・ラージのギターにおまかせな部分もあるような気はします。

ラージのギター・フレージングはさすがの表現力なので、ゾーンのねらいは成功しているような気はしますが、「だったらジュリアン・ラージのギター・トリオで良くない?」という気にもなってしまうのですよね。

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