リバティ・エルマン(Liberty Ellman)『Last Desert』レビュー

ギタリスト、リバティ・エルマンが2020年3月27日に新作『Last Desert』をリリースしました。リリース元であるPi Recordingsのカタログページは(→こちら

https://pirecordings.com/

Personnel:
Steve Lehman (Alto Saxophone)
Stephan Crump(bass)
Damion Reid (Drums)
Liberty Ellman (guitar)
Jonathan Finlayson (Trumpet)
Jose Davila (Tuba, Trombone)

リバティ・エルマンはPi Recordingsと繋がりが深いミュージシャンで、レーベルのアルバムにギタリストで参加するほか、マスタリング・ミキシングエンジニアの仕事もこなすなど、レーベルの専属ミュージシャンと言っても良いくらいです。

『Last Desert』は前作『Radiate』 (2015)とメンバーは同じでソロアルバムも良いのですが、彼がサイドミュージシャンとして参加したアルバムもすごいです。

ヘンリー・スレッギルがピューリツァー賞を受賞した『In for a Penny, In for a Pound』(2015)を筆頭に、ヴィジェイ・アイヤーの『In What Language?』(2003)などの初期のアルバムや、スティーブ・レーマンと共演し、ルドレシュ・マハンサッパをトップサックスプレイヤーに引き上げた『Dual Identity』(2010)などなど。

こういったミュージシャンの活動を振り返ると、エルマンが関わった作品が後のキャリアを決定づける重要な役割を果たしていることがわかります。

ただ、Pi Recordingsはサブスク配信しないので、彼の活動はアルバム以外はほとんど良くわからないですね。
Pi Recordingと繋がりの深いミュージシャンでも、他のレーベルからリリースしたアルバムが聴けたりしますから。エルマンはYouTubeの動画とかも(非公式含め)少ないですし。

このブログは基本的にはわたしの紹介の文章はどうでも良くて、どういう音楽かは実際に音源を聴いてもらえれば良いと思っているのですが、彼みたいなミュージシャンは困るなぁ、、

という訳で数少ない彼のグループの動画がこちら。
どういう訳かマハンサッパとレーマンのダブルサックスになってる!

リバティ・エルマン・グループは、”裏” 『Far From Over』

今回リリースするアルバム『Last Desert』の参加メンバーは、ヴィジェイ・アイヤーのECM作品『Far From Over』(2017)と共通点を感じさせますよね。
『Last Desert』に参加している3人(レーマン、クランプ、フィンレイソン)とも『Far From Over』にも参加しています。

ちなみにアイヤーはEllmanについて
「「25年以上前に初めてリバティを聴いたときから、彼はいちばん私の好きなギタリスト/作曲家になりました。彼は創造性と鋭い直観力に溢れ、心を揺さぶるメロディー、豊かなテクスチャー、深いグルーヴ、そしてハードなエッジを持つ、まさにミュージシャンズ・ミュージシャンです」
とベタ褒めしています。

『Far From Over』は2010年代を代表する傑作アルバムと言っても良いのですけど、実はこのアルバムはリバティ・エルマンのグループがベースになっているんじゃないかと思います。

曲は全てエルマンが書いているのですが、ところどころに複雑な構造の曲構成が垣間見えて、こういう曲はレーマンのテイストが強いのかなと思いますね。

ヘンリー・スレッギル’s Zooidからのつきあいである、チューバのJose Davilaはアンサンブルの中でユニークなアクセントになっていますね。
ドラムはもともとジェラルド・クリーヴァーだったのですが(おそらくうるさすぎて)ダミオン・リードに交替しています。
ダミオン・リードはガンガン飛ばすタイプの人じゃないみたいなので、こういうアンサンブル重視の編成ではけっこうはまっていると思います。

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