シリア生まれのクラリネット奏者キナン・アズメと、クラシックをベースにジャンル越境の活動を行うブルックリン・ライダーの共演アルバム『Starlighter』
このアルバムは2023年のリリースということなのですが、リリース当時は聴きそびれていました
これはなかなかに素晴らしいアルバムですね。
もしリリース当時に聴いていたら年間ベストの候補になったかもしれません
こちらはタイトル曲『Starlighter』のライブ映像
キナン・アズメは主にクラシック系のフィールドで活躍するクラリネット奏者で、私のブログでは同じくクラリネット奏者のデビッド・クラカウアーが彼の曲を取り上げたことで名前は知っていました。
主に作曲家として認知されている人なのかな、と。
彼のルーツである中東の音楽も取り入れた音楽づくりを行っているのですが、彼自身が参加しているシルクロード・アンサンブルのように、クラシックというフィルターを通した民族音楽、という雰囲気はただよっていますね。
ブルックリン・ライダーはシルクロード・アンサンブルにちょこっと参加したことがあるそうで、アズメとは定期的に共演しているそうです。
「ジャンル横断的でワールドミュージックも取り入れるストリング・カルテット」というとクロノス・カルテットが真っ先に頭に浮かぶと思うのですが、ブルックリン・ライダーも基本はネオ・クラシックよりではありますが、近いコンセプトの活動を行っていますね
ブルックリン・ライダーも「ジェネリック版クロノス・カルテット」といった雰囲気が無きにしも非ずですが、クロノス・カルテットのような「音楽は国境を超える」といったイデオロギー的な雰囲気はないと思います。
あとブルックリン・ライダーのチェリストであるマイケル・ニコラスは、Tzadikのアルバムに参加したりと、NYダウンタウンシーン側からも注目されていますね。
メンバーの話でいうと、パーカッションのマティアス・クンズリはJohn Madof率いるRashanimのドラマーでもあった人です(Rashanim懐かしい)
RashanimはTzadikはレーベルをあげてプッシュしていたと思いますが、結局ハネることなく最後はゾーンもあきらめて自然消滅した気はします。
マティアス・クンズリはかなり昔の動画でゴージャスな日本人女性を連れて歩いていた気はしますが(余談)ヨーロッパを拠点に移したのかな?久しぶりに名前を聞きました
本作はクラシックにありがちな、いろんな時期のいろんな演奏をコンパイルしたもので、アズメが故郷のダマスカスを再訪したときの感情を語っている3つの楽章からなる「In the Element」
ブルックリン・ライダーのヴァイオリニスト、コリン・ジェイコブセンのタイトル曲『Starlighter』は、光合成という不思議なエネルギーの変換にインスパイアされた(コリンはかなり変な人ですね)
「Dabke on Martense Street」はアルバムで唯一ストリング・カルテットのために書かれ、パンデミックの封鎖が始まったときに、生演奏への渇望と母国の結婚式の祝祭でおなじみのやラインダンスにインスパイアされた曲
「Everywhere is Falling Everywhere」は元々はシルクロード・アンサンブルのために書かれ、レフ・ズルビンが同じクインテット+パーカッションのために改作した曲。タイトルはルーミーの引用らしいです
さまざまな曲がありつつ、アラブ音楽、クレズマー、西洋クラシックの要素が絶妙にブレンドされており、アズメのクラリネットもシンプルでありながらエモーショナルで聴き惚れてしまいます
こちらのライブ映像にはアルバムに収録されていない曲も演奏されていて、アルバムを聴いて気に入った人は必聴の動画ですね