Jyotsna Srikanth『Carnatic Nomad』

南インド、カルナータカ音楽のヴァイオリン奏者Jyotsna Srikanth(ジョツナ・スリカンスと読めば良いのだろうか)の最新作『Carnatic Nomad』

Jyotsnaは毎年イギリスで行われるインド音楽のフェスDarbar Festivalに参加していることで名前は聞いたことあったのだけど、彼女のアルバムをちゃんと聴くのは初めてかな。

こちらは2022年Darbar Festival出演時の演奏

 

北インド音楽もそうだが、南インド音楽のアーティストはそもそもアルバムというフォーマットを重要視していなくて、ライブかむしろYouTube動画の方に力を入れている人の方が多いと思います

なので彼女も(キャリアの割に)古典のアルバムとしてはあまりリリースをしていないと思いますが、今回は彼女のヨーロッパツアーに合わせてリリースされたようです
こういった(ポピュラーミュージックのような)リリース形態じたいが南インド音楽としては珍しいと思いますね

このアルバムですが(みんな大好き)TransGlobal World Musicチャートでランクインしていました

また彼女は同じTransGlobal World Musicのサイトにて2024年の殿堂(Hall of Fame)に名前を連ねていましたね
他にはエルメート・パスコアールなど、かなり高齢で長いキャリアを積んできた人が多かったので「もう殿堂入りするんだ」と以外でしたね

彼女はインド南部バンガロール生まれでありながら、ロンドンに移住したミュージシャン
母親がカルナータカ音楽の声楽家・教師であったことから、5歳から声楽を学び、6歳からヴァイオリンを学んだというサラブレッドですね
彼女の初コンサートは9歳だったそうです

また幼いころからカルナータカ音楽の英才教育を受けながらも、西洋クラシックのヴァイオリンも学んでいるようです
インドでも西洋ヴァイオリンを学び、ロンドンでも王立音楽学校でも学んだとか

フュージョンバンドなどの活動も行っていたようで、ガチガチの古典よりというわけではないようです
(いまの人は普通にキーボードなど普通に共演していますから不思議ではないですが)

彼女の演奏については、この西洋クラシックの素養というのが、彼女の音楽性に影響を与えているような気はします。
演奏を聴いた印象だと割とスムーズというか、インド音楽にありがちな情緒過多なところは抑え目な印象ですね

このアルバムもやはりヨーロッパを中心に活動するということで、このアルバムもインド系以外の人も意識した演奏なのかも
ざっくりいうと、一曲は割と短め、ターラもシンプル、ティハーイのようなルールは薄め

伴奏のパーカッション奏者は、Manjunath B.C.(ムリダンガム)とAmrit N.(カンジーラ)

このカンジーラの人はハリシャンカルのお弟子さんらしいのですが、カンジーラの叩き方動画をYouTubeに挙げていたりして、顔は良く見ていました(わたしは以前トカゲ皮のカンジーラ持ってて、ちょっと練習したりしたんで)
カンジーラ系YouTuberと言えるかもしれません。
このアルバムで演奏しているのを見て「ああ、ここまでビッグになったんだな」とちょっとうれしくなりましたね

北インド音楽のタブラは、音がクリアで(高音の音=Taの音)主張が強いと思うのですが、今作でも使われている南インドのムリダンガムには(アラブ音楽のベンディールのような)ビビり音があり、カンジーラにも皮を叩く音にジンバルの音がプラスされています。
どちらもクリアさよりも厚みのある音が特徴のパーカッションで、そのためアルバム全体が、音圧高めというか音の量は多めでリッチな印象ですね
(南インドでタブラのようにクリアな音を出す場合はガタム=壺になると思いますが)

深淵の南インド音楽、まだまだ奥が深いですね