サックス奏者ジョン・イラバゴンが吹く『反逆者たちの歌』

 

サックス奏者のジョン・イラバゴン(Jon Irabagon)の新アルバム『Rebellion(s)』が2020年の11月にリリースされていたのですね。

SNSなどをチェックしていても全く話題になっていなかったので気づきませんでした。改めてこのアルバムの情報を検索しても日本語のweb記事・ブログなどはひとつもヒットしませんし。

なんと言っても彼のことはもうファンと言っても良いのでアルバムが出たら紹介しないとですね。
まぁ正直言ってこの『Rebellion(s)』が「傑作だ」とか「年間ベスト候補だ」とかいう訳じゃないですが、ユニークなアルバムだし聴きどころも多いです。

Personnel
Sylvain Rifflet – tenor saxophone
Jon Irabagon – mezzo-soprano and sopranino saxophone
Sébastien Boisseau – double bass
Jim Black – drums

このアルバムはイラバゴンとフランスのサックス奏者シルヴァイン・リフレとのダブルサックスによるアルバム。

シルヴァイン・リフレというサックス奏者の名前は初めて聞きましたが、あまりフランス以外で名前の知られた人ではないと思いますが、ルイス・スクラヴィスのライブに参加したり、映画音楽っぽいアルバムをリリースしたりしているようです。
実はイラバゴンとリフレは『Perpetual motion』というムーンドッグのトリビュートアルバムで共演済みなのですね。

『Rebellion(s)』というアルバムタイトル通り、社会の抑圧に対して抵抗してきた人々にフォーカスし、彼らの声を素材として曲を書き、演奏したアルバムです。

取り上げられた活動家は、ジャン・ムーラン(フランスのレジスタンス活動家)、オランプ・ド・グージュ(フランスの劇作家、女優で、フェミニズム運動の世界的な先駆者)、エマ・ゴンザレス(フロリダ州高校銃撃事件の生存者でアメリカの銃規制活動家)、グレタ・トゥーンベリなど。
歴史上の人物からいま現在も活動を続ける人まで様々です。

このアルバムでは彼ら・彼女らをテーマにするだけでなく、彼らの演説・声を流し、その声に合わせて演奏するというコンセプトになっています。オランプ・ド・グージュなど歴史上の人物に関しては当時のテキストを朗読で読み上げるといった手法をとっていますね。

ジャズ演奏にポエトリー・リーディングをのせるというコンセプトは過去に例も多いと思います。特にアメリカは公民権運動をテーマにしたアルバムなども。
そうした過去のアルバムはシリアスな雰囲気のものも多いのですけど、このアルバムは(基本フリージャズっぽいですが)スローバラードや映画音楽、ハードバップっぽいパートもあり、聴いてて楽しいですね。
インタビューなどを読むと「抵抗運動」というシリアスなテーマを選んだのはおそらくリフレのようなのですが、シリアスになりきれないところがイラバゴンの人間性なのかもしれないですね。

ポエトリー・リーディング部分は基本ベースとドラムが伴奏の中心になるのですが、単調にならずに済んでいるのはジム・ブラックのドラムによるところが大きいかも。彼はやっぱりいまだワン・アンド・オンリーですね。

Jon Irabagon’s Outright! ← New!

『Rebellion(s)』は単発のコンセプトアルバムでしたが、最新のイラバゴンの活動のメインはというとメンバーを一新したJon Irabagon’s Outright! が控えているようです。
コロナ禍の中で基金や助成金を受けて作られた「Recharge the Blade」という曲があり、その曲を演奏するために新たに編成されたようです。

Jon Irabagon – sax
Ray Anderson – tb
Matt Mitchell – piano
Chris Lightcap – bass
Dan Weiss – drums

これはなかなかの豪華メンバーですね。

このグループのSmallsでのお披露目ライブの模様


アルバムもリリースされるみたいなのでこちらも楽しみです!

それにしてもイラバゴンは髪を後ろで結び髭を生やしてすっかり人相が変わって別人みたいですね。村上隆さんみたいかも。