ベーシストJohn Hébertによるミンガス・トリビュート『Sounds Of Love』

今日はフレット・ハーシュ・トリオやメアリー・ハルヴォーソンのグループの活動でも知られているベーシストのJohn Hébertがリリースした、ミンガスへのオマージュアルバム『Sounds Of Love』について。

ちなみに彼のファミリーネームは実際に発音を聞くと「イベア」という表記が正しいようです。
日本ではどうも「エイベア」という表記が多いみたいですね。ディスクユニオンなんかは「エイバート」と書いてあったり。バラカンイズム的にはマズい状況ですねえw

このアルバムは新録ということではなく、2011年から続けているミンガス・トリビュート・プロジェクトの一環として2013に行った年ヨーロッパツアーの、スイス・ルガノ・フェスティバルでのライブ録音を収録したもの。
チャールズ・ミンガスは1922年生まれ(79年死去)ということで、今年は生誕100年ということでリリースされたものと思われます。
ミンガスといえば昨年も1974年にレコーディングされた『Mingus At Carnegie Hall』の完全版という最高のアルバムがリリースされていましたが、今年は区切りということでまたミンガス関連で盛り上がるのかも。

『Sounds Of Love』で演奏される曲は、ミンガスにインスパイアされてHebertによる曲とミンガスが書いた曲がミックスされた構成になっていますが、特に1975年のアルバム『Changes One』に焦点をあてたアルバムになっているみたいです。
カバー曲である2曲はどちらも『Changes One』収録の「Duke Ellington’s Sound Of Love」と「Remember Rockefeller at Attica」で、「Frivolocity」という曲もおなじく『Changes One』収録の「Sue’s Changes」という曲のベースラインを元に書かれているそうです。

このミンガスの『Changes One』というアルバムは彼のディスコグラフィーの中で真っ先に名前のあがるアルバムじゃないのですが(自分は今回初めて聴いた)、2管フロント(ジョージ・アダムスとジャック・ウォルラス)による熱量の高い演奏と、ドン・プーレンのよどみなく音数の多いピアノという対照的な要素が上手く配置されたふり幅の大きなアルバムですね。
「ミンガスのすごさは個性の強いメンバーをまとめるバンドリーダーとしての資質」といった評価も良く聞くのですが、『Changes One』を聴くと「なるほどね」という気もします。

このアルバムはクインテット編成なのですが、なんと言ってもメンバーが豪華。

John Hébert – bass
Taylor Ho Bynum – cornet
Tim Berne – alto saxophone
Fred Hersch – piano
Ches Smith – drums & percussion

もうオールスターと言っても良いかも。
ティム・バーンやフレッド・ハーシュがこんな感じでサイドメンとして演奏するのも(無くはないですが)けっこう珍しいですね。
ちなみにフレッド・ハーシュは、ミンガスと数多く共演したジャッキー・バイアードに師事したというつながりもあるみたいです(トリビア)

各メンバーの演奏は、”さすが”という感じのTim Berne、ジャズIQの高さがうかがえるTaylor Ho Bynum、『Changes One』でのドン・プーレンの役割をそつなくこなすFred Hersch、ミンガスのようなバンドのオーガナイザーとして存在感を出したJohn Hébert、チェス・スミスはいつものチェス・スミス(?)という感じ

言ってみれば過去音源でライブ盤で企画盤、なのですけど聴きどころ盛りだくさんのアルバムですね。